2014 Fiscal Year Research-status Report
より高度な音声能力の養成を目指した日本語音声教育に関する研究
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26370598
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
河野 俊之 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (60269769)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発音 / 超級 / アクセント / ストラテジー / 気づき |
Outline of Annual Research Achievements |
旧・日本語能力試験「出題基準」に掲載された,4~1級の語彙すべてについて,拍数,品詞,アクセント型,アクセント型のルールを入力し,その分析を行った。それにより,恣意的とされる日本語のアクセント型について,例外はあるものの,1つの可能性しかないもの,2つの可能性しかないものが多いことが分かった。また,これらは,特に,教科書や教師によるモデル音声の提示が少ない,1~2級の語にその傾向が強く,つまり,超級・上級学習者にとって,有益な情報であることが分かった。 超級・上級学習者は,使用語彙とするべき語が多く,教室内で,教科書や教師のモデル音声を繰り返したり,また,教師が発音を訂正するのは限界があり,音声教育をそれだけに限定するのは現実的でない。そこで,教室外での学習者の気づきが重要である。教室外でのインプットについて,気づきが起こり,インテイクすることが重要になる。そこで,本研究では,以下の活動を行った。1)モデル音声の会話文を学習者が読み上げ,録音する,2)モデル音声を聞き,学習者が読み上げただろう音声と比較する,3)学習者が読み上げた音声を聞き,モデル音声と比較する,4)再度,モデル音声の会話文を学習者が読み上げ,録音する。これにより,学習者の気づきが促進され,モデル音声の会話文の読み上げにおけるアクセントについて,その誤用が減少していることが明らかになった。 これらの研究成果については,2014年日本語教育国際研究大会及び第43回日本語教育方法研究会において,研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語のアクセント型を分析し,それを学習者に簡潔に示すことはほぼ当初の計画通りである。その中でも,特に,教科書や教師によるモデル音声の提示が少ない,1~2級の語にその傾向が強く,つまり,超級・上級学習者にとって,有益な情報であることが分かったことは大きな成果と言えるだろう。 本研究の特徴的な活動である,「モデル音声を聞き,学習者が読み上げただろう音声と比較する」について,実際に,学習者のアクセントの誤用が減少していることから,気づきが促進されていると考えられる。しかし,気づきが必ずしも言語化できていない部分もある。これは,「学習者が読み上げた音声を聞き,モデル音声と比較する」という活動自体の問題ではなく,研究方法に問題があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語のアクセント型の傾向のみでなく,それを学習者のアクセント型の誤用の傾向と比較したい。 本研究の特徴的な活動である,「モデル音声を聞き,学習者が読み上げただろう音声と比較する」について,気づきが必ずしも言語化できていない部分もあることについては,現在,学習者が独りで気づきをダイアリーに記すという方法を取っているが,そうではなく,研究者がインタビューする方法に変えることで,気づきが言語化しやすく,また,気づきがさらに促進されると考えている。 また,超級・上級学習者のみでなく,初級・中級学習者も研究対象としたい。 これらの知見を元に,デジタルポートフォリオの開発・試用を行う。
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Research Products
(3 results)