2014 Fiscal Year Research-status Report
中規模地方自治体の多文化共生施策、特に日本語教育プログラムへの提言
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26370602
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐藤 友則 信州大学, 学術研究院 総合人間科学系, 教授 (10313868)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大規模調査 / 質的調査26名 / 量的調査1070名 / 日本語教育 / 多文化共生意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、長野県・松本市、韓国・全州市、石川県・金沢市などに在住の外国人等を対象に調査を実施し、中規模地方自治体への有効な日本語教育プログラムおよび多文化共生施策の提言を目指すものである。 計画当初は、H27年度に松本市および周辺在住の外国人および日本人住民を対象にした大規模調査の実施が予定されていたが、松本市役所が「松本市多文化共生推進プラン」の見直しを念頭にH26年度に調査を実施することを決定したため、本研究と松本市の調査を一体化させて、協働方式でH26年度に実施することにした。 在住外国人を対象にした質的調査(インタビュー)チームの人員は、調査員5名、通訳6名である。質的調査の対象となった在住外国人は計26名で、本研究で予定されていた9名を大幅に上回ることになった。在住外国人の国籍内訳は、中国5・台湾1・韓国1・フィリピン5・ブラジル7・タイ6・インドネシア1である。松本市在住の在住外国人の国籍比率では韓国・朝鮮が最も多いが、在日朝鮮/韓国人が多いために日本語教育の必要性は低く、そのため質的調査の対象者はわずかになっている。 質的調査の調査項目は、①基本属性 ②日本語の習得 ③雇用・労働 ④保育・教育 ⑤医療・福祉 ⑥日常生活 ⑦日本人との関係 ⑧行政サービス一般 である。②日本語の習得については下部項目として、1)現在の日本語能力 2)家族の会話で用いられる言語 3)これまでの日本語学習 4)受けたいと思う日本語支援(サービスの時間、場所、内容) 5)今後の日本語学習についての意向 6)日本語支援についての要望 を設け、詳細に情報を得た。量的調査の回答者数は、日本人住民が720人(回収率54%)、外国籍住民が350人(回収率36.8%)である。 年度末に量的調査を含めた調査の大部分が終了した段階であり、結果の分析は今後本格的に進めることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも記述したように、当初はH27年度に実施予定だった松本市とその周辺での大規模な質的・量的調査を、H26年度に前倒しで実施した。そのため、H27年度は韓国・全州市での質的調査および石川県・金沢市と長野県・飯田市での調査に注力することが可能となった。 また、H26年度の調査は松本市役所との協働作業であったことから、質的調査対象者および量的調査回答者の数、それぞれの調査の質などの点で、研究計画であげていたものを上回ることが可能となった。結果として研究の目的である「中規模地方自治体の有効な日本語教育プログラムおよび多文化共生施策の提言」のための有効な資料を早期に収拾することができた。 これらの点により「当初の計画以上に進展している。」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
7月に韓国・全州市でインタビュー調査を実施する予定である。インタビュー対象者は、多文化共生行政にかかわる行政担当者、外国籍住民とほとんど関わりのない者2名、外国籍住民の支援に関わる者2名である。行政担当者に対しては、2007年の多文化共生に関する基本法が韓国で制定されてから現在までの、中規模地方都市である全州市での多文化共生事情の変遷、改善点、問題点などについて質問する。外国籍住民とほとんど関わりのない者に対しては、多文化共生に関心がなく国の施策を冷やかに見ている立場からの意見を期待している。一方、外国籍住民の支援に関わる者に対しては、以前と比べどのような改善点があるか、現在の大きな問題点は何かを質問する予定である。この2グループにどのような意識上の差異がみられるかに注目している。さらに、韓国全体の多文化共生施策の研究者である全北大学校の薛東勳教授へのインタビューも予定している。薛教授には、非常に急速に法整備と関係施設の整備、人員の確保などが進められてきた韓国全体の多文化共生の現状について詳しく話を聞き、さらに今後の展望について意見を求める。 国内での調査に関しては、冬に金沢市、来年春に飯田市において、研究協力者と協力者が推薦する関係者2名の計3名を対象にインタビュー調査を実施する予定である。それぞれ、中規模地方都市であり、松本市と同様に外国人の集住地域ではないという共通点がある。それら地域における多文化共生行政、特に日本語教育プログラムについてインタビューの上、研究上、有用な情報を得ることを目的とする。
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が遂行できたため、軽微な残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
単体で計画を立てられる額ではないため、27年度予算に組み込んでインク・カートリッジ購入などの物品費に使用する。
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