2014 Fiscal Year Research-status Report
個々の学習者タイプに応じたボトムアップ処理の効率化に関する研究
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26370628
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
森 千鶴 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50210125)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リーディング / スペリング / ディコーディング / 音読速度 / 繰り返し |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は英語教育における課題であるボトムアップ処理の効率化について追究するものである。その方策として「音読」と「書き写し」の基礎的研究を行う。学習者タイプとしては、読解力とスペリング能力に極端な不均衡がある学習者(R+S-とR-S+)に注目した。R+S-タイプは読解力の諸要素のうち、文字列の音声化とスペリング(Decoding)に問題がある。一方でR-S+タイプはDecodingは行えるが、読解力(Comprehension)に問題がある。そこで、まず29名の大学1年生(非英語専攻)を対象として、読解力テスト(英検2級、準1級の読解セクション、16点満点)とスペリングテスト(37点満点)を実施し、それぞれの平均点±0.5 S.D.を基準として4タイプを特定した。その結果、R+S+3名,R+S-3名,R-S+4名,R-S-3名となった。 さらにこれらの被験者に、読解力テストとは別の読み物(Arab Gift Giving,136語、英検準1級レベル)を音読させた。音読し始める前に、2分程度テキストを黙読させ、その後内容把握を確認してから音読を開始させた。7回繰り返して音読させ、音読速度の推移を記録した。調査は個別に実施した。結果の概要は以下のとおりである。まず、初回の音読速度は、R+S+ は1分~1分10秒台、R+S-は1分30~40秒台、 R-S+ は1分20秒台、R-S-は1分40秒台から2分10秒台であった。またR+S+以外の3タイプが、R+S+の速度(1分10秒台)に追いついたのは、R+S-は個人差があり、1名が2回目、1名が4回目、1名が7回目であった。 R-S+は2名は2回目、1名が3回目、1名が4回目、R-S-は1名が3回目、2名は7回目でも追いつかなかった。音読速度の伸びはS(スペリング)能力によるところが大きい傾向にあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究(森、2007)により、リーディング能力とスペリング能力の間に力の不均衡がある被験者の場合、スペリング能力が音読速度の伸びと関係していることはある程度明らかになっていた。今回はまず、その先行研究の裏付けをすることができた。またさらに、 R+S+の音読速度にそれぞれの3タイプ(R+S-, R-S+, R-S-)がどのくらいの音読回数で追いつくかについては、個人差が見られたタイプもあったが、おおむね特定できた。当然、初回速度を起点としていることから、これらの3タイプがR+S+の音読速度で読めるようになるには、R+S-は少なくとも2回、回数が多い場合は4回~7回、R-S+は2回~3回、R-S-は7回か、それ以上繰り返す必要があるということが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ボトムアップ処理を促進するためのもう一つの方策である「書き写し(copying)」について研究する。新たに大学1年生(非英語専攻)の学生に読解力テストとスペリングテストを実施する。そして、R+S+, R+S-, R-S+, R-S-の4タイプを特定する。 一瞥して書き写せる範囲を「書き写しスパン」と呼ぶが、それは読解力と相関があることは、先行研究(Mori & Yamada, 1988)において実証されている。しかし、読解力が高い被験者の中にも書き写しスパンが短い被験者がおり、R+S-を想起させた。そこで、音読のときと同じように、上記4タイプの書き写しスパンと書き写しスピードの特徴を探る。読解力テストとは別の読み物を準備し、始める前に2分程度英文を黙読させる。内容把握を確認したあとで、英文を書き写すように指示する。その際被験者には、英文を見ながら書くのではなく、見ている間は、手を動かさないように注意させ、「一瞥して書き写せる範囲」を厳守させる。これを7回繰り返し、書き写しスパンとスピードがどのように推移していくかを記録する。最終的には、R+S-, R-S+, R-S-の3タイプが、R+S+の書き写しスパンに追いつくのは何回目かを測定する。
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Causes of Carryover |
当初、物品や書籍を科学研究費の直接経費で購入する予定であったが、他の研究費(使途に制限のない経費)でそれらを購入することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額として生じた金額については、書籍購入にあてる予定である。
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