Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,近い将来,日本人英語学習者のための英語リズム発音訓練の教材開発を目指し,(1)どのような語(例:定型表現)において, (2)どのような提示方法で(例:文字情報),(3)どのように学習方法で(例: 暗示vs.暗示+明示),(4)どのような期間(集中 vs.分散),訓練すれば,日本人英語学習者が苦手とする語強勢(長さ:弱母音の強母音に対する割合と,弱母音の質)の発音習得に最も効果があるのかを検討する.訓練方法には聴覚性プライミング(反復)効果を用いる.
平成26年度は,(2)刺激語の提示方法:文字情報の影響について検討した.実験では「学習期」に,音声刺激語を「音声のみ8回」,「音声+文字8回」,「音声7回→音声+文字1回(最後)」のいずれかで提示し,参加者に復唱してもらった.10分後の「テスト期」では全刺激語(学習期で反復なしの単語も含む)を文字提示し,参加者に音読してもらった.学習期に反復あり,なしの単語の発音を比較した結果,訓練の最初から音声と文字で同時提示された単語を反復した場合と,音声提示のみで反復した単語において,同程度の発音向上が見られた(長さの面).一方で,音声提示後,最後に1回提示した文字情報が, 長さ・質ともに発音学習に負の影響を与えた.
以上より,本研究は, 音声反復により形成された表象に文字を介してアクセスする為には,学習期に音声提示された単語を十分に反復すること,文字情報もある場合は,学習の最初からでよいので十分に反復する必要性を示唆した.また,学習者は音声と文字情報を一致させる機会があることでより発達した音韻表象を形成し,L2 言語処理,習得を促進できることも示した.音声と文字の両者をどのように提示すれば正確な語強勢の音韻表象を形成し,発音向上につながるかを明らかにすることは,発音教育と音韻処理のプロセスの解明において意義があると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では下記の要因を検討する実験を計画している.(1)どのような提示刺激語を(例:単語とコロケーション)(2)どのような提示方法で(例:文字情報,強弱の視覚提示)(3)どのように学習(例:暗示的学習vs.暗示的学習+明示的学習)(4)どのような期間(例:集中学習 vs.分散学習). 3年計画のうち,1年目に(2)を進めることができており,比較的順調と言える.ただし,発表や論文化については,やや遅れているため,ペースを早めて実施していく.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は, 先に述べた研究目的のうち, (1)どのような提示刺激語を(例:単語とコロケーション), (2)どのような提示方法で(例:文字情報,語強勢の強弱の視覚提示)について,(1), (2)の要因を組み合わせて,効率的に実験を進める予定である.また,(2)について実験計画の変更を予定している.当初,「学習期」に視覚提示された刺激語の中で,強く読む個所(音節)に大きな○印,弱く読む個所には小さい○印を示し日本人英語学習者にとって習得が困難な弱母音にも注意を向けさせる実験(語強勢の強弱の視覚提示)を計画していた.しかし,バックアップとして計画していた,プロソディー情報をハミングする実験を優先させて行っていく予定である.先行研究のレビューの結果,後者は,教育実践しやすいだけでなく,研究の浅い第二言語(L2)音韻処理のメカニズムの解明に貢献ができる余地が十分にあると考えられるためである.その他の研究目的である(3)どのように学習(例:暗示的学習vs.暗示的学習+明示的学習),(4)どのような期間(例:集中学習 vs.分散学習)については, (1),(2)の結果を踏まえ,最も効果的な提示方法・学習方法を用いて平成27年度後半から実施する予定である.
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