2014 Fiscal Year Research-status Report
アジア・太平洋海域における有田焼交易ネットワークの考古学的研究
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26370757
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
野上 建紀 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (60722030)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガレオン貿易 / 出土有田焼 / ラテンアメリカ / 国際研究者交流 / メキシコ / 国際情報交換 / キューバ / ペルー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジア・太平洋海域の有田焼の交易ネットワークの復元を目的としており、平成26年度については有田焼の海外輸出港である長崎市内の各遺跡、台湾などの貿易中継地やベトナムなど東南アジア市場の消費遺跡などの調査、中南米における有田焼出土に関する情報収集とキューバにおける出土陶磁器調査を計画していた。その内、貿易中継地や東南アジア市場の消費遺跡の調査以外の研究を予定通り、実施することができた。 まず長崎市内および近郊の遺跡から出土した遺物の分析を行うとともに、生産地から長崎への輸送路上に位置する遺跡から新たに出土した遺物の観察を行った。生産地から長崎までの輸送については、通説はあるものの、不明な点が多く、今回観察を行った資料はその手がかりとなる重要なものである。続いて中南米における情報収集は新たにメキシコのメキシコシティー、プエブラ、ウエホツィンゴの各遺跡で有田焼の出土を確認することができた。またペルーにおける陶磁器出土状況をペルーの研究者と意見交換を行った。まだペルーを含めて南米では考古学資料としては有田焼は確認されておらず、今後の南米調査を行う上で非常に有用な情報である。キューバにおける出土陶磁器調査については、ハバナで出土した陶磁器片の分類、分析を行い、実測、撮影等による資料化を図った。さらにハバナではサンタ・クララ修道院跡の発掘調査に立ち会い、出土陶磁器について分析したところ、新たに有田焼の陶片を発見することができた。ハバナから出土した資料は、アジアからアメリカ大陸へ渡った太平洋ルートだけでなく、さらにヨーロッパへ渡る大西洋ルートの実態を考察する上でも貴重な資料となる。 その他、研究内容と関連する研究会(日本貿易陶磁研究集会)に参加し、情報収集するとともに、金沢大学で開催された考古学大会で本年度の研究成果を中心に発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アジアの中継地や東南アジア市場の消費地など港市の調査について未実施であるため、やや遅れていると評価したが、研究全体としては概ね計画通りに進展している。生産地(有田・波佐見など)および積出港(長崎)における研究と、中南米・カリブ海における研究は一定の成果を上げつつある。前者については特に生産地と積出港だけでなく、それらをつなぐ輸送路に関する新規の資料が発見されている。後者についても短期間の調査日程にもかかわらず、メキシコ、キューバ各地の遺跡で新たに有田焼の出土が確認できている。研究の空白地であるペルーにおいても情報交換の段階ではあるものの、多くの情報を入手することができている。その中には今後の研究を大きく進展させる可能性をもつものも含まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にあげた3つの目的課題の内、まず生産地および積出港の調査については計画通りに実施する。次に中南米・カリブ海の調査研究についても当初の計画通り、陶磁器の出土情報を可能な限り、事前に入手した上で実際に現地で確認する作業を行う予定である。平成27年度は26年度に情報収集したペルーおよびメキシコの調査を行い、平成28年度についてはペルーの調査成果を見た上で改めて計画する。一方、貿易中継地や東南アジア市場をはじめとしたアジア海域の港市の調査について、当初は平成26・27年度に実施する予定であったが、平成27年度に現地等で情報収集を実施する予定である。有田焼の交易拠点の踏査や試掘調査については、当初計画では中国、台湾、フィリピンなどアジア海域を想定していたが、可能であればより大きな成果を見込める中南米・カリブ海の交易拠点の踏査等を現地研究機関と協力しながら行いたいと考えている。 また平成28年度は、有田焼創業400年に位置づけられており、研究成果の公開の機会を積極的に見つけていきたい。
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Causes of Carryover |
調査先との調整の結果、平成26年度に実施を予定していたアジアの中継地調査や東南アジア市場の消費地調査等の調査を平成27年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に実施予定としながら、実施しなかったアジアの中継地調査や東南アジア市場の消費地調査については、平成27年度に実施する予定である。その他については現段階では計画通りに実施する予定である。ただし、有田焼の流通経路上で重要な拠点の踏査あるいは試掘調査については、平成26年度の結果を受けて、調査地を検討中である。すなわち、当初はアジア海域の交易拠点を計画していたが、可能であれば、より大きな成果を見込める中南米、カリブ海の交易拠点の踏査、試掘調査を現地研究機関と協力しながら行いたいと考えている。
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Research Products
(6 results)