2015 Fiscal Year Research-status Report
アジア・太平洋海域における有田焼交易ネットワークの考古学的研究
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26370757
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
野上 建紀 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (60722030)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガレオン貿易 / 出土有田焼 / ラテンアメリカ / 国際研究者交流 / メキシコ / 国際情報交換 / ペルー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジア・太平洋海域の有田焼交易ネットワークの復元を目的としており、平成27年度は、生産地である有田・波佐見、積出し港である長崎の出土陶磁器調査、そして、前年度に情報収集を行ったメキシコ(4・5月)およびペルー(8・9月)の出土陶磁器調査を行った。4・5月のメキシコ調査では、ガレオン貿易の新大陸側の貿易港(荷揚げ港)であるアカプルコの要塞の踏査と出土陶磁器調査、メキシコ市内遺跡の出土陶磁器調査を行った。アカプルコでは中国磁器のみの確認であったが、メキシコ市内遺跡の調査では、多数の有田焼の出土資料を発見することができた。 続いて8・9月のペルー調査では、リマ、カヤオ、アレキパ、クスコなどの都市およびペルー北部の集落における陶磁器調査を行った。その結果、リマでは市内の3つの遺跡で有田焼の出土を確認することができた。南米大陸における初めての発見であり、鎖国時代に有田焼が太平洋を渡り、南米にまで輸出されていたことを考古学的に証明することができた。平成27年度の研究の最も大きな成果である。その他、リマ、アレキパで東洋磁器のコレクションの把握を行った。 中南米で発見した有田焼の資料については、実測、写真撮影、画像処理を行い、資料化を図った。その結果、生産地の有田や波佐見、積出し港の長崎、アジアの中継地や消費地である台湾、フィリピンなどの遺跡から出土した資料と比較することが容易になった。 そして、メキシコ、ペルーのいずれの調査においても情報交換、意見交換等を現地の研究者と行い、研究のネットワークを構築することができた。今後の研究が円滑に行われることが期待できる。 研究成果については、台湾の中央研究院で開催された海港都市国際研討会、専修大学で開催された東南アジア考古学会例会、金沢大学で開催された考古学大会などで発表を行う他、複数の研究ノートや論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生産地(有田・波佐見)や中南米・カリブ海の消費地(メキシコ・キューバ・ペルー)の調査については、おおむね順調に成果を上げることができている。特に南米に関しては、最初の調査で有田焼を発見し、資料化まで行うことができた。本研究の主な目的の一つであった南米への有田焼輸出の考古学的証明をすることができ、当初の計画以上の成果と言ってよい。しかしながら、アジアの中継地や東南アジア市場の消費地などの調査が十分にできなかったため、やや遅れているという評価を行った。アジアの調査については、現地調査先と調整を行ったが、現段階でも不確定要素が大きい。そのため、中南米やカリブ海の交易拠点の踏査に切り替えることを考えたが、まだ中南米やカリブ海については調査候補地を絞り込める状況にはない。そのため、特定の地点の詳細調査よりもさらに広範囲に調査範囲を広げていくことの方が今後の研究において有益であろうと考えている。 成果の公表に関しては、国際会議を含む学会や研究会発表が3本、論文や研究ノートが3本、共著が1冊と当初の計画以上に公開の機会を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、最終年度となる平成28年度はフィールドの補足調査を行う予定であったが、流通範囲の広がりをさらに確認していくために、コロンビア等の南米の他地区の調査を新規に行うことにした。 そして、3年間の中南米・カリブ海の陶磁器調査で得られた資料を整理するとともに、生産地である有田・波佐見、海外積出し港である長崎、フィリピンのセブ出土遺物などの遺物も合わせて資料化を行い、アジアと中南米の比較研究作業を行う予定である。 また、平成28年度は、有田焼創業400年を迎え、研究成果の公開の機会が増えるものと思う。そうした機会を積極的に見つけていくとともに、3年間の調査研究成果を報告書の形で広く公開したいと考えている。
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Causes of Carryover |
計画していたアジアの中継地調査や東南アジア市場の消費地調査等の現地調査の実施を見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現段階では特定の遺跡の試掘等を行うよりもまず広く有田焼の分布を確認する方が重要であると考えている。そのため、今年度の事前調査によって出土陶磁器に関する有益な情報を得られたペルー以外の南米の国(コロンビアあるいはエクアドル)の調査を新規に実施する。また、本研究の成果を広く公開するために、3年間の中南米・カリブ海の調査成果を整理作業を行い、研究成果報告書を作成する考えであり、その整理作業と報告書作成に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 太平洋を渡った陶磁器2015
Author(s)
野上 建紀
Organizer
東南アジア考古学会・アジア文化財協力協会
Place of Presentation
専修大学(東京都千代田区)
Year and Date
2015-04-18 – 2015-04-18
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