2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370789
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
多和田 雅保 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (10528392)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本近世史 / 地方史 / 流通史 / 在方市 / 商人 / 信濃国 |
Outline of Annual Research Achievements |
歴史資料の所在調査と収集については、在方市を中核とする近世の小布施村における社会構造の様相について、小布施町文書館において調査・研究を行った。特に平松快典氏所蔵文書及び関谷文彦氏所蔵文書について、歴史資料の現状記録調査、目録作成、写真撮影による資料データ収集を行った。後者は今回の調査であらたに見出したものであり、多湿環境のもとで保存状況が憂慮されたため、中性紙封筒への入れ替えを行うなど保存措置を講じた。小布施に出入りしたさまざまな品種の商人集団にかんする歴史資料情報の所在調査にかんして、薪売集団については、高山村役場に『高山村誌』編さん時のデータが残されていることが判明した。香具師集団については、中野市歴史民俗資料館に照会した結果、長野県立歴史館及び東京国文学研究資料館に所蔵されていることが初めて確認できた。肴売集団については、特定の所蔵館の所在は確認できなかったが、『上越市史』を購入し検討することで、上越市域に当該歴史資料が残されていることがあらためて判明した。 また、18世紀から19世紀にかけての小布施市における売買構造の変容について研究を進めた。とくに18世紀前半期、小布施市においてそれまで商人集団の世話をすることを主な目的としていた商人宿が、市日に路上に仮設された様々な商品の売場を店舗内に取り込む動きがあらゆる商品についてみられ、みずから売買に直接関与していく様相があきらかになった。その成果は平成27年度中に論文として公表されることが決定している。 既に作成した歴史資料目録のデジタル入力については、年度内に一部進めることができた。 既収集歴史資料の翻字作業については、小布施町小山洋史家文書、同平松快典家文書、同久保田英雄家文書、同市村卓美家文書について、商品の生産及び流通を示す資料情報の翻字を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に詳細に分け入ってみた場合、進展度合に差はみられるが、小布施市をとりまく商人集団の所在調査については、電話、電子メールなどでの照会により所在状況の概要把握を済ませたところがあり、歴史資料の実見自体については平成27年度に持ち越されている。ただし、小布施町文書館への出張を中心としたそれ以外の研究計画についてはすべて計画どおり進めることができた。特に歴史資料の内容分析については、在地社会を自由に移動してまわる多様な商人集団と、それを招くことによって利益を得る小布施市の商人宿とが交錯することによって市場社会が成熟を遂げていく見通しを明確化できるという、当初予想していなかった成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度から取り組んでいる小布施市自体の社会構造分析にとどまらず、小布施市にもたらされた多様な商品について、できるだけ生産の現場にまで踏み込んだ歴史資料情報の収集を行う方向で研究を進めていく予定である。特に平成26年度からの継続課題として、薪の生産現場である高山村と、かねてからの計画どおり魚(可能であれば塩も)の生産現場である新潟県上越市において、小布施に関連する資料情報の発掘につとめたい。そのうえで、小布施市における商品の売買構造において、「生産と流通の相互規定性」という観点からの研究を年度内に進めていきたいと考えている。
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