2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370802
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
真辺 将之 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (80546721)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大隈重信 / 立憲政治 / 天皇論 / 文明運動 / 国民読本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果として特筆できることは、『国民読本』を中心とする大隈の国民教育活動についての検討を行ったことである。とくに、彼がなぜこの国民教育活動において、皇室や天皇の存在を基軸に据えて、『国民読本』を編纂し、そうした天皇を中心とする日本の国体を強調したのか、ということを検討した。その結果は、2016年2月に梓出版社より発行された編著書『明治期の天皇と宮廷』に収録した論文「大隈重信の天皇論―立憲政治とのかかわりを中心として―」に明らかにしたが、大隈がそうした天皇・皇室と、それを中心とする日本の国体を強調したのは、大隈自身が感じていた、国民の政治的未成熟という状況をどう挽回するか、という戦略と関わっていたと考える。すなわち、大隈率いる政党は1907年の大隈の憲政本党総理辞任に到るまで、結局一度も自由党~政友会系の政党に対して大勝利をおさめることができなかったが、大隈が腐敗していると考える自由党~政友会系政党に勝利を与えているのは、ほかならぬ国民であり、その国民が、金銭などに目をくらませて、選挙権を正しく行使していないと大隈は観察したのであった。そこで、日本の立憲政治は天皇から与えられた貴重なものであり、その運用にあたっては、その憲法に規定された権利こそ重視しなければならないという論理で、国民に対して憲政教育を行おうとしたのであった。したがって、大隈の憲法論や天皇論においては、「権利」というものが何よりも重視されることになったのである。以上のことを本年度の研究において明らかにすることができた。 またこれ以外に、大隈が関わった各種団体に関する基礎的な資料や、関連図書を集めることができた。これらについては、次年度以降検討をさらに進めていき、それぞれ論文にまとめることを企図していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、本年度、大隈の国民教育と天皇論にかかわる成果を外部に発表し問うことができた。また文明運動を含め、大隈の活動全般を概観した書籍についても現在準備中であり、来年度または再来年度までには発表できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、大隈がかかわった個別の団体の活動内容について、踏み込んで分析し、論文化する作業にも取り組んでいきたい。そのために、各種雑誌類に掲載された大隈論説をこれまで以上に集めていくこと、さらに関連する書籍類を入手し、その検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
大隈が当該期に発表した雑誌『新日本』の復刻版(第三期分)を購入する予定であったが、そのためには残額が少々足りないように思われたため、次年度に予算を合算して購入しようと考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
雑誌『新日本』復刻版(第三期分)を購入したいと考えている。
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