2015 Fiscal Year Research-status Report
リモートセンシングデータを用いた『水経注』黄河および支流群の復元
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26370829
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
長谷川 順二 学習院大学, 文学部, 研究員 (00523763)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国 / 黄河変遷 / リモートセンシング / 『水経注』 / 現地調査 / 歴史地理 / 堀込河道 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年7月に研究代表者の長谷川順二が中国・河南省および山東省の黄河下流域で現地調査を実施した。本調査では主に北魏期黄河の支流の一つであるルイ水故道の調査を重点的に実施し、事前に日本で行ったリモートセンシングデータSRTM-DEMを利用した地形解析の結果と現地の地形状況がほぼ一致することが確認できた。特に現地では自転車を利用して土地起伏の調査を行い、現黄河と前漢黄河の中間地帯には自然堤防の痕跡がほとんど存在しないことが確認できた。これは北魏期黄河のみならずルイ水や済水などの支流においても現黄河のような堤防が形成されない「堀込河道」であったことに繋がる。 『水経注』では当時の黄河河口には三角州が形成されず、ルイ水や済水など複数の河川が併走して渤海へと流下したと記されていたが、リモートセンシングデータの地形解析と現地調査の双方において三角州の痕跡は確認できず、この記述が正しいことが確認できた。また現地調査では東営市付近で多くの油井ポンプを確認し、前述の併走河道が油田の形成要因とされる「背斜構造」に由来することが確認できるなど、おおむね予定通りの成果を得ることができた。 また本研究の成果の一部を2014年12月に上海・復旦大学で開催された第2回東アジア若手歴史家セミナーで「リモートセンシングデータを利用した黄河古道復元―前漢黄河と『水経注』黄河の比較―」と題した報告を行い、2016年3月発行の『人文』第14号(学習院大学人文科学研究所)では「リモートセンシングデータを利用した『水経注』に記される北魏期黄河古河道復元―河南省濮陽市~山東省東阿県~ジ平県~高唐県―」と題した論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年に実施した現地調査により、北魏期黄河支流の一つであるルイ水故道についてはほぼ特定が完了した。またもう一つの復元目標である済水故道について、2016年度実施予定の現地調査準備と合わせて2015年度にはすでに文献記述に基づく検討を完了している。2016年の現地調査で対象地域の地形等状況を確認することで、当初の研究目標である『水経注』に記される北魏期黄河および支流群の代表であるルイ水と済水の3本の古河道復元が予定通りに完了する。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように2015年度までにルイ水故道に関する現地調査、および済水故道に関する文献記述の検討を完了し、当初の予定通り2016年度に実施する現地調査によって『水経注』に記される黄河を中心とした黄河下流域全体の水系や地理状況の復元を行う。 なお近年の日中両国間の政治的な関係悪化に伴い、中国国内の一部地方において日本人研究者が自由に調査を行うことに対する懸念が耳にされる。本研究では現地調査において中国上海・復旦大学歴史地理研究中心の協力を得て実施しており、2015年度の現地調査ではまったく問題は生じていない。しかし特に中国においては、政治状況の変化によってどのような影響が生じるかは未知数である。これについては充分に注意しつつ、慎重に現地調査を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
本研究の内容を国際的にアピールするため、本研究の前段階に位置付けられる2016年2月に発行した自著を、中国側関係者へ配布する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中国側関係者への配布分の自著購入および発送費用として使用する予定。
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Research Products
(2 results)