2016 Fiscal Year Research-status Report
リモートセンシングデータを用いた『水経注』黄河および支流群の復元
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26370829
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
長谷川 順二 学習院大学, 文学部, 講師 (00523763)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国 / 黄河変遷 / リモートセンシング / 『水経注』 / 現地調査 / 歴史地理 / 掘込河道 / 中国古代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年5月に中国・河南省および山東省の黄河下流域で現地調査を実施した。昨年同様に現地では自転車を利用して土地の起伏を確認し、リモートセンシングデータSRTM-DEMでの事前調査との一致あるいは差異を確認した。 本年調査の目的は現在の黄河河道の基とされる「済水」の古河道調査である。『水経注』によれば済水の起点であるとされる河南省済源市、黄河が清代に決壊し、北東へ屈曲する現在の河道となった河南省蘭考県の現河道や、現地で「廃黄河」と呼ばれる清代以前の河道、現在の黄河下流域へと連なる唯一の湖である東平湖から黄河へと流入する合流点、そして済水が北魏期黄河・ルイ水と併走して渤海へと流下した現在の山東省東営市などを訪れ、現在の地形や都市の立地状況などを確認した。現地では昨年のルイ水と同様、北魏当時の黄河や済水に由来する痕跡はほぼ確認できなかった。しかしこれこそが、当時の黄河が自然堤防を形成しない「掘込河道」であったことの証左と考えられる。 本調査の成果と2012年の現地調査で判明した北魏期古河道、2015年の現地調査で判明したルイ水河道と合わせることで、『水経注』に記される北魏期黄河下流域の黄河・ルイ水・済水のおおまかな位置関係および形成過程・要因等を把握することができた。これによって従来の文献記述に基づく研究では把握しづらかった南北朝期の黄河下流域における軍事その他の行動記述を再整理し、北魏を中心とした当時の歴史状況の詳細把握が可能となる。 またこれらの研究成果の一部を2017年度発行の『東洋文庫欧文紀要(Memoirs of the Research Department of the Toyo Bunko)』No.75に掲載予定である(英語論文)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の前段階である博士論文を、『前漢期黄河古河道の復元』と題した著書として2016年2月に刊行した。この書籍刊行は研究計画時点では予定していなかったことであり、刊行作業を行ったことで、本研究課題の進捗が若干遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度までの現地調査及びリモートセンシングデータ解析によって、北魏期当時の黄河下流域の全体像はおおむね把握できた。本年は最終年度としてこれらの研究成果を論文としてとりまとめ、公表を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅れによって1年延長したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果のとりまとめや公表のために必要な書籍購入や印刷費等に用いる。
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Research Products
(1 results)