2015 Fiscal Year Research-status Report
古典期のマケドニア王国の発展に関する研究:フィリポス2世のギリシア制覇を中心に
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26370849
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
澤田 典子 千葉大学, 教育学部, 教授 (50311650)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マケドニア / アイガイ / ペラ / フィリポス2世 / デモステネス / ギリシア / 神的崇拝 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、古典期におけるマケドニア王国の発展とフィリポス2世によるギリシア制覇の諸相を、マケドニア史の「連続性」を重視しつつ、長期的な枠組みのなかで多角的に解明するという研究目的のため、まず、近年のマケドニア考古学の成果を整理した。21世紀に入ってめざましい発展を見せているマケドニア地方の発掘調査の成果について、アイガイ(ヴェルギナ)とペラの発掘報告書や研究文献を検討し、とりわけ前5世紀のマケドニア王国の文化内容を同時代のポリス世界と比較しつつ跡づけた。さらに、デモステネス・アイスキネス・テオポンポスを中心とするフィリポス2世と同時代の文献史料を批判的に検討し、彼らの政治的・社会的立場や価値観を踏まえたうえで、彼らが描くマケドニア王国とフィリポス2世のギリシア制覇の諸相を慎重に読み解く作業を進めた。さらに、前年度のペルディッカス3世の治世におけるマケドニア国内の状況の分析、および上述のマケドニア考古学の成果と同時代の文献史料の分析を踏まえて、マケドニア王国の社会変容の検討という課題に着手した。王国の急速な台頭の背景となったフィリポス2世の富国強兵策について、従来の諸研究がテーマとしてきた軍制改革そのものではなく、軍制改革とその後の軍の飛躍的な拡充を可能とした社会的条件に焦点をしぼり、フィリポス2世による都市建設・人口移動・農地開拓の過程を分析し、マケドニア王国の社会が彼の治世にいかに変容したのかを考察した。これらの考察は、最終年度となる次年度の課題である、フィリポス2世によるギリシア制覇の過程の実態解明、および彼のギリシア制覇を可能にした諸要因の考察の前提となるものである。 また、昨年度に引き続き、マケドニア王の権力のあり方を考える一助として、マケドニア王の神的崇拝の問題について、アミュンタス3世とフィリポス2世の事例を中心に、わずかな文献史料を慎重に分析する作業も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した今年度の3つの課題(近年のマケドニア考古学の成果の整理・検討、フィリポス2世と同時代の文献史料の批判的検討、マケドニア王国の社会変容についての検討)全てについて取り組み、一定の成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度の課題に引き続き取り組むとともに以下の4つの課題に着手し、最終的に、3年間の研究成果を総括する。 (1) ギリシアの諸地域におけるフィリポス2世の政策および勢力浸透の過程の分析 (2) フィリポス2世が前王たちから「継承」したものについての考察 (3) フィリポス2世がギリシア制覇に成功した理由の検討 (4) ギリシア史におけるフィリポス2世のギリシア制覇の意義についての考察
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