2015 Fiscal Year Research-status Report
中世アキテーヌ公領の領域的性格の変遷に関する総合研究
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26370873
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
加藤 玄 日本女子大学, 文学部, 准教授 (00431883)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フランス / イングランド / ガスコーニュ / 領域 / 移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2年目であるため、当初の計画に基づき、機器や文献の購入など研究環境の整備を図るとともに、以下の四点に集約される研究を行った。 第一に、先行研究の検討である。近年の南フランス中世都市史の研究動向を、①南フランス都市における自治とアイデンティティ②市民的共同体を特徴付ける要素(制度、シンボル、表象)の観点から整理した。この成果は、『都市史研究』3号に掲載予定である。また、フランスの歴史学や地理学で用いられている「テロワール」の概念について、日本建築学会都市史小委員会シンポジウムでコメントした。 第二に、フランスにおける史料調査である。ヴォクルーズ県文書館(アヴィニョン)・カルパントラ市立図書館・リル=シュル=ソルグ市立図書館において史料と文献の収集を行った。 第三に、百年戦争中のガスコーニュ諸侯であるガストン・フェビュスの生涯を分析した成果を、「国王と諸侯」近藤和彦編『ヨーロッパ史講義』(山川出版社、2015年)として発表した。 第四に、イングランドやフランスといった王国、教皇領、聖地のような領域を越えて行き来した貴族の一例として、サヴォワ出身ジャン・ド・グライーが13世紀の英仏独関係史において果たした役割について検討し、日仏歴史学会第6回研究大会にて口頭報告した。この成果は、朝治啓三・渡辺節夫・加藤玄編著『帝国で読み解く西欧中世の権力構造』(ミネルバ書房、近刊)にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な目的であった先行研究の検討・整理に関しては、順調に遂行することができ、成果の公表につながった。また、中世後期・末期における領域の変遷と住民のアイデンティティの性格についても、論考を発表することができた。フランスにおける史料調査については、7月分は遂行することができたが、2016年3月に予定していた分は、パリとブリュッセルにおけるテロのために中止を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの作業を継続するとともに、特に司教座や小教区などの教会の領域の性格を検討の対象とする。(a)先行研究の検討を行う際には、13世紀のフランス国制史を専門とする渡辺節夫名誉教授(青山学院大学)にアドヴァイスを頂く予定である。また、(b)刊行史料の分析に加え、(c)未刊行史料の網羅的収集と分析を中心とし、所蔵先であるイギリス国立公文書館とフランス国立図書館にて調査収集を行い、デジタル画像かマイクロフィルムの形で入手する。 なお、日本の大学図書館では所蔵しておらず、入手が困難である地方誌雑誌、中世考古学を専門とする学術雑誌を適宜購入し、その他の最新研究文献の補充も合わせ、情報のアップデートを図る。
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Research Products
(3 results)