2014 Fiscal Year Research-status Report
第三帝国における「衣料ユダヤ人」宣伝と経済の脱ユダヤ化
Project/Area Number |
26370884
|
Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
山本 達夫 東亜大学, 人間科学部, 准教授 (50341251)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ライヒスコミサール / アーリア化 / オーストリア / オーストリア合邦 / ユダヤ人政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
オーストリア国立文書館において,1938年3月のオーストリア合邦時のユダヤ人政策に関する史料の閲覧・収集をした。研究計画に述べたザフリアンのテーゼ(第三帝国のユダヤ人政策の点がベルリンからではなく,オーストリアという周辺から展開した)を,オーストリアの官庁(交通流通省)について調査した。 ザフリアンは,ナチズムの反ユダヤ政策にとって,オーストリア合邦はドイツ本国に相乗効果をもたらしたと主張する。そして,①ドイツにおける「自由意志によるアーリア化」から「強制アーリア化」への移行はオーストリアにおける実践によって促進された,②オーストリアで自立的におこなわれた迫害の歩みが,第三帝国の反ユダヤ政策に影響を与えた,とのべている。 ザフリアンのテーゼを検証するためには,オーストリアにおけるユダヤ人政策において,国家が経済の脱ユダヤ化をどう統制していたかを分析する必要がある。個々の命令が行政末端でどのように実施されていたのかも解明しなければならない。その上で,オーストリアでの実践を,ドイツ本国における1937年末からの経済の脱ユダヤ化過程と比較し,両者の相違点を分析する。 問題は,オーストリア共和国の行政機構が合邦後も約2年間存続していたことである。この「移行期」の実態を解明する必要がある。ドイツ本国から派遣された国家全権委員(ライヒスコミサール)が有した権限が,オーストリアの行政機構・官吏の手を通して,オーストリアにおける政策の展開にどう作用ていたのかを見極める必要がある。このことは,RKW(国家経済性管理機構)との関連を分析するさいにもいえる。 次年度も,交通流通省の史料を分析する予定である。オーストリアにおいて,営業経営の処分権制限に関する法律がアーリア化の促進と制限の両方に使われたというテーゼの検証を通して,第三帝国全体のユダヤ人政策にどのように反映されたかを明らかにしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文書館員の助言により,未閲覧の関係史料に多く接することができた。ただし,1938年3月から,行政上もオーストリアが第三帝国に完全に組み込まれるまでの「移行期」についての行政機構・命令系統をあらためて精査する必要が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も,今年度調査した交通流通省の史料を分析する。オーストリアが行政上も第三帝国に組み込まれるまでの「移行期」についての行政機構・命令系統の精査をする。
|
Research Products
(1 results)