2016 Fiscal Year Research-status Report
ミクロネシアの都市形成と構造変動に関する地理学的研究
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26370927
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
宮内 久光 琉球大学, 法文学部, 教授 (90284942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 博史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20270994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 都市構造 / 中心性指数 / 都市機能分類 / テニアン市街地 / 宇検村 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は南洋群島の市街地の中心性に関する研究、テニアン市街地の都市構造に関する研究、および南洋群島の産業を支えた移民に関する研究をおこなった。 南洋群島の市街地の中心性に関する研究では、国勢調査の産業別就業者数を用いて、南洋各市街地ごとにネルソン法などの都市機能分類をおこなった。また、市街地の中心性をゴトルンドの方法、シダールの方法、石水照雄の方法で求めて比較した。このほか、『大南洋興信録 南洋群島編』(1939)を用いて、各市街地ごとに都市的施設をデータベース化して、西村睦夫の方法で中心性指数を測定した。その結果、中心性指数はコロール、ガラパン、テニアン、チャランカノア、コロニア、夏島、ヤップ、ヤルートの順で低減すること、コロールとガラパンが他の市街地と比較して指数が卓越することが客観的に示された。 テニアン市街地の都市構造に関する研究では、アメリカ公文書館に保管されていた南洋庁コレクション(国立国会図書館に移管)の「臨検視察営業者名簿」(テニアン出張所、1940)をデータベース化し、街区ごとに商業・サービス施設を分類・集計した。また、復元した市街地図上で施設を同定するとともに、街区ごとの施設の特徴を経営者の属性と合わせて考察した。テニアン市街地は西半分が南洋興発の社宅街となっている。戦前期に南洋興発テニアン製糖所に勤務していた経験を持つ人にインタビューを行い、職階ごとにどこの社宅に配置されたのかを聞き取りした。以上のことから、テニアン市街地の一般市街地と南洋興発社宅街の空間構造を解明し、その成果を沖縄地理学会で発表した。 南洋群島の産業を支えた移民に関する研究では、今年度は奄美大島宇検村、沖縄県大宜味村、同八重瀬町からの移民について調査した。宇検村からの移民では、隔絶性ゆえに移民斡旋業者の代わりに村役場がその役割を果たしていたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度までに南洋群島の中心性に関する研究、市街地内部の空間構造に関する研究、南洋の産業を支えた移民に関する研究のいずれもが資料収集、データ分析、考察まで進めることができている。また、これらの成果の一部は平成28年度中に学会発表や論文発表という形で公開している。以上の理由から、研究は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
南洋群島の中心性に関する研究では、今年度算出した各市街地の中心性指数を、当時の日本本土の都市や植民地都市と比較して、近代期の日本の都市システムの中で南洋市街地がどの階層に位置づけられるのかを検討する。 市街地内部の空間構造に関する研究では、ガラパン市街地とコロール市街地について検討した上で、今年度検討したテニアン市街地も含めて、三市街地の空間構造の共通点と相違点を検討する。 南洋の産業を支えた移民に関する研究では、引き続き奄美大島宇検村と沖縄県八重瀬町からの南洋移民について、南洋における定住と移住、職業遍歴などについて、資料分析のほかに、聞き取り調査も実施して明らかにする。 このほか、研究課題である都市形態の継続性の研究に着手したい。そのためには、南洋群島の各市街地を上空から撮影した戦前期の高解像度の空中写真を収集して現在のそれと比較することで、街路や建築物の変化度を計測する。 次年度(平成29年度)は本研究課題の研究最終年度になるので、これまで取り組んできた各テーマについて、考察をおこなったうえで論文化して公表したい。
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Causes of Carryover |
2月に予定をしていた米国公文書館での空中写真や接収資料の収集が、日程の都合上実施できなかった。そのため、海外調査1回分の旅費の執行ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度実施できなかった米国公文書館での資料収集調査については、次年度の早い段階で実施し、繰り越し分の予算を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)