2016 Fiscal Year Annual Research Report
Cultural geography of gardening in Japan and Britain, c.1800-2010: life history, gender and transculturation
Project/Area Number |
26370938
|
Research Institution | Kobe Yamate University |
Principal Investigator |
橘 セツ 神戸山手大学, 現代社会学部, 教授 (70441409)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 文化地理学 / 庭園(ガーデン、ガーデニング、園芸) / イギリス(英国) / ライフヒストリー / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ライフヒストリーとジェンダーから近現代の日本と英国の庭園をめぐる思想と実践に地理学的にアプローチした。本研究では、日英の文化を越える庭園にも注目して、ジェンダーとライフヒストリーの分析を行った。近現代は日英ともに女性の教育、女性の家庭での役割、女性の社会進出などに共通した方向の変化が捉えられる。本研究ではライフヒストリーで語られる旅行・学校・家庭における庭園の実践のプロセスがジェンダー化することを批判的に明らかにした。さらに庭園の実践の中に現れる社会性・生産性・精神性の価値基準のスケールを組み合わせ考察することで、近現代の各々の世代による庭園の実践に女性と家庭や社会との多様化・複雑化する関係の諸相がどのように現れるか解明した。 本研究で得られた主な知見は次にまとめられる。 1)20世紀初期の英国では日本庭園が流行した。当時は、英国人ならば女性が、ガーデンデザイナーとして地主に雇われることは、ほとんどなかった。しかし、本研究ではガーデンデザイナーが外国人女性であるという事実が、ジェンダーよりも強く作用したケースがあった。2)近代の家庭のなかで主婦が営むガーデニングは、しばしば幸福の象徴として美的に、同時にジェンダー化され、政治的に描かれた。3)20世紀の2つの世界大戦を契機に、女性が、それまでは男性の領域とされたガーデニングを含む農作業を行うことが社会的に認められた。4)庭園の視覚化イメージが発動する美、健康、幸福、家庭、モラル、エコロジー的意味や価値観は、階層化され、ジェンダー化されながら、社会、自然、身体について再帰的な関係にあった。5)21世紀初期の日本のイングリッシュガーデン・ブームを牽引するのは女性が多いが、日本人の自然観と親和しながら新たなライフスタイルとして定着しつつある。6)高齢化社会の中でガーデニングの語りはセカンドライフの充実を語ることと重なる。
|