2014 Fiscal Year Research-status Report
憲法適合的解釈の国際比較 ―「日本型違憲審査制」の構築にむけて―
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26380033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 真一 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70243003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 哲治 同志社大学, その他の研究科, 教授 (40289129)
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 准教授 (40551495)
山田 哲史 帝京大学, 法学部, 助教 (50634010)
白水 隆 帝京大学, 法学部, 助教 (70635036)
内野 広大 三重大学, 人文学部, 准教授 (90612292)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 憲法適合的解釈 / 合憲限定解釈 / 一部違憲 / 司法審査の民主主義的正当性 / 憲法救済法 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクト全体については、計画において、平成26年度の早期に全体会合を行い、問題意識や基礎的知識の共有を予定していた。これに従い、7月に第1回全体会合を開催し、内野・山田が研究課題に関する従来の議論状況を整理して報告した。この会合で再確認された疑問点を解消すべく、11月に第2回全体会合を開催し、宍戸常寿教授を講師に迎えて、公開研究会の形で実施した。なお、山田報告は、会合での議論や宍戸教授の講演を踏まえて、帝京法学誌上に年度末に掲載された。 次に、個別の研究者による研究実績については、当初の計画に従って、英米法グループと大陸法グループに分かれて、緩やかな連携関係を構築しつつ行われた。 英米法グループのうち、アメリカ(土井・松本)については現地調査が平成27年度に設定されている関係もあり、我が国の憲法適合的解釈の現状分析が中心に行われ、最高裁判決の評釈という形で公表された。イギリス(内野)についても、現地調査の時期との関係上、イギリスの人権条約適合的解釈に関する邦語文献における現在の議論の到達点の把握に注力し、比較法の土台作りを行った。カナダ(白水)については、現地調査としてカルガリー大学ロースクールにおいて、複数の研究者からのヒアリング及び討論を行った。 大陸法グループは、外国調査を行うことが予定されていたが、相手方との日程調整が不首尾に終わったことなどにより延期となった。しかし、奥村は、フランスにおける憲法適合的解釈に相当する、憲法院による解釈留保判決に関する調査を行い、その類型を整理した。山田も、ドイツにおける憲法適合的解釈の基本的な枠組みについて調査を進め、その成果の一部は上述の論稿に反映されている。また、日本法を主たる題材に、憲法適合的解釈について実践的検討を行う報告を外部で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体会合は3・4ヶ月に一度の開催が予定されていたが、2回にとどまった。ただし、これは、研究代表者・分担者の日程調整が困難であったことに伴うもので、研究の進捗の遅れを示すものではない。研究実績の概要で述べた通り、2回の会合は充実したものであり、問題意識と基本的知識の共有という目標は十分に達成できた。とりわけ、第2回目の会合は、外部に公開した研究会方式で行われ、理論的に高水準の意見交換を外部に発信し、当初の目標を超える成果であった。 個別研究の状況については、英米法グループのうち、カナダについては、当初の予定通り、現地調査を実施し、有益な資料収集・現地研究者との意見交換を行うことができた。イギリスについても、イギリスにおける人権条約適合的解釈に関するわが国の従来の議論を総括し、次年度の現地調査、比較法研究の本格化に道筋をつけている点で、順調に進展している。アメリカ法については、当初の予定よりも日本法の分析に力点が置かれた面は否めないものの、本研究課題にとって重要な事項であり、現地調査を前に比較的余裕のあるアメリカ法担当者がこれを分担することは適切であった。 問題点としては、大陸法グループが海外現地調査を延期せざるを得ない状況となったことを指摘しなければならない。現地の状況等、やむを得ない事情によるものであるが、結果として、この点について計画の遅れを招くこととなった。ただし、日本国内での代替的・予備的な調査により、仏独両国における議論状況について基本的な認識を獲得することができているので、27年度に行われる現地調査はより充実したものになることが期待できる。 以上の次第であり、概ね順調な進展を見せていると言えるものの、大陸法に関する現地調査の遅れ等が認められることから、自戒の意味を込めて、「やや遅れている」との自己評価を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
原則として、当初の計画・研究方針で研究を推進する。第一に、本年度は比較法研究の深化・本格化を図る。まず、英米法グループのうち、アメリカ・イギリスについては予定通り現地調査を実施する。また、平成26年度に現地調査の延期を余儀なくされた大陸法グループも、早期に現地調査を行う。その後、現地調査の結果の分析・整理を経て、各国における憲法適合的解釈の有り様を明らかにする検討を進める。もちろん、現地調査の結果等により変更となる可能性はあるが、例えば、奥村は、近時のフランス違憲審査における事後審査の導入という点に配慮しながら、フランスにおける個別の先例を詳細に検討する予定である。山田は、法体系における憲法の位置付けに留意しつつ、ドイツにおける憲法適合的解釈と憲法志向的解釈の有り様の解明に努める。さらに、新たに英米法・大陸法の両グループ横断的な欧州人権法グループの発足を目指す。 本研究は、単なる外国法の調査にとどまるものではなく、憲法適合的解釈の日本法における望ましい姿を探究するものである。従って、上述のように27年度は比較法研究が中心に据えられるとはいえ、これと並行して日本法の検討も行う。この点については、例えば、内野は26年度全体会合での報告を発展させる形で憲法適合的解釈の要件論に重点をおいて取り組む予定であり、松本は、研究成果を演習教材書の分担執筆や雑誌連載の形で随時公表することを予定している。 さらに、共同研究たる本研究の成功には、研究者相互の連携が重要であり、従来通り、土井の統括の下、全体会合を定期的に行う。実際、7月には、奥村と白水が研究成果を報告することがすでに決定している。
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Causes of Carryover |
主たる理由は、当初の計画において予定されていた大陸法グループ(奥村・山田)のドイツ及びフランスの現地調査が、次年度に延期されたことによる。調査の延期理由は、まず、奥村については、本研究課題以外の用務のために日程調整が困難になったこと、及びパリにおけるテロ事件の発生により現地の治安状況を確認する必要なども生じたことによる。また、山田については、27年4月付けで人事異動が生じ、その影響で年度後半に予定されていた海外調査の日程が限定されたこと、またインタビューを予定していたUlrike Lembke教授が休暇に伴い不在となったことによる。 白水に配分された研究費も10万円程度繰越となっているが、これは、円安傾向に照らして、現地調査費を大きく見積もっていたものの、燃料費の低下などの関係もあり、想定よりもかなり安価に抑制することができ、結果的には余剰が生じる結果となったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、延期されたフランス及びドイツの海外調査については、今後の推進方針でも述べた通り、27年度の早いうちに実施する予定であることから、繰越し分をそのための支出に充てる予定である。 次に、現地調査費の低下によって生じた繰越は、為替変動などによる価格変動を想定して、26年度に購入を見送ったものを中心に、資料及び情報機器等の購入に充てる。なお、その際にはし、慎重さを維持しつつも、前年度のように余剰が生じないように、一層適切な執行に努める予定である。
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Research Products
(4 results)