2015 Fiscal Year Research-status Report
憲法適合的解釈の国際比較 ―「日本型違憲審査制」の構築にむけて―
Project/Area Number |
26380033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 真一 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70243003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 哲治 同志社大学, その他の研究科, 教授 (40289129)
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 准教授 (40551495)
山田 哲史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50634010)
白水 隆 帝京大学, 法学部, 講師 (70635036)
内野 広大 三重大学, 人文学部, 准教授 (90612292)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 憲法適合的解釈 / 合憲限定解釈 / 一部違憲 / 憲法判断の方法 / 司法審査の民主的正当性 / 憲法救済法 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクト全体については、平成27年度は各国の憲法適合的解釈をめぐる議論の概念整理が主たる課題であったため、7月に行われた第1回研究会では、奥村がフランスについて、白水がカナダについて、12月に行われた第2回研究会では、松本がアメリカについて、内野がイギリスについて、各国の状況を報告し、研究代表者の土井を中心に、参加者全員で検討した。 個別の研究実績について、まず、大陸法グループでドイツを担当している山田は、8月末に「知的財産権と憲法的価値研究会」(代表・中山信弘明治大学教授)からの依頼を受け報告(演題「我が国の憲法訴訟における憲法適合的解釈」)し、同時に報告した宍戸常寿東京大学教授や出席者と意見交換し、理解を深化させた。また、26年度に見送った、ドイツ連邦共和国における海外調査を9月に実施した。フランスを担当している奥村もまた、26年度に見送った、フランス共和国における海外調査を8月から9月にかけて実施した。 英米法グループでアメリカを担当している松本は、アメリカ合衆国における海外調査を3月に実施し、Michigan State University College of Lawを訪問した。カナダを担当している白水は、26年度に実施したカナダへの現地調査を踏まえ、そこで収集した資料や文献の検討を行い、最終年度に向けて論文の執筆に取り掛かっている。さらに、イギリスを担当している内野は、第一に、憲法適合的解釈の要件論の理論的側面に焦点を合わせ、わが国の学説を整理・分析し、日本法における課題をより鮮明なものとした。第二に、分析法理学の知見に基づきイギリス1998年人権法の諸判決を再構成することで、欧州人権条約適合的解釈の要件論を展開する見解につき、検討を加えた。 なお、松本は、本研究に関連する成果を演習教科書の執筆や雑誌連載の形で随時公表し、広く一般に公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体会合及び各グループでの検討は、順調に行われており、充実した意見交換により、考察の深化が見受けられる。 具体的には、前年度延期されていたドイツとフランスに加え、アメリカの海外現地調査が実施され、その調査結果について、研究分担者間で共有された。イギリスの現地調査については、研究費の執行に関する事務手続きに支障が生じ、平成28年度に実施せざるを得なくなったが、既に準備は十分に行われており、研究の遂行に問題はない。これにより、ほぼ各国の状況は把握できており、これに基づいて、全体的な考察を進める段階に至っている。 したがって、昨年度の遅れを取り戻し、おおむね順調に研究は進展しているといってよい状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
原則として、当初の計画・研究方針に基づいて研究を推進する。 まず、イギリスの現地調査を早い段階で実施し、英米法グループ及び大陸法グループが、それぞれ担当国等の状況を分析した結果をまとめる(現段階で、既にその成果が公表されているものもある)。 ついで、我が国における憲法解釈論として、憲法適合的解釈がどのような意義と限界を有するかについて、最高裁判例の分析と比較法的研究の成果を有機的に結び付けながら検討を行い、合憲限定解釈及び一部違憲などの憲法判断の方法との異同を整理する。 その上で、憲法適合的解釈や一部違憲の「人権保障的機能」に着目し、裁判所が実効的な権利救済を行うために必要な条件を解明し、憲法救済法の可能性について研究を進めていくこととしたい。 全体会合については、当初の予定通り開催するとともに、本年末までに、京都大学でシンポジウムを開催し、研究成果を報告する。そこでの意見交換の結果を踏まえて、最終的な研究成果を書籍の形で公刊するため、各研究分担者が担当するテーマについて原稿の執筆を行う予定である。
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Causes of Carryover |
イギリスでの現地調査を平成27年度の夏期休暇中に実施する予定であったが、研究費配分の事務手続に支障があり、間に合わなかったことにより、そのための旅費を平成28年度に使用することとなった。 また、本研究の成果について、比較法学会で報告する機会が与えられることになったため、それにかかる旅費を確保する目的で、平成28年度に繰越すこととなった。 さらに、平成28年末にシンポジウムを開催し、ゲストスピーカーを招くことになったため、旅費・謝金等の分を繰り越している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
イギリスの現地調査を平成28年度の早い段階で実施するとともに、比較法学会及びシンポジウムの開催に合わせて、必要な経費を支出する予定である。
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Research Products
(4 results)