2015 Fiscal Year Research-status Report
都市計画と公共交通計画の融合を通じた集約型都市計画法制の比較実証研究
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26380045
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
大橋 洋一 学習院大学, 法務研究科, 教授 (10192519)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コンパクトシティ / 都市計画 / 公共交通計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、都市交通(とりわけ公共交通)に着目し、コンパクトシティを実現可能とする都市法制のあり方を探求する点にある。平成27年度においては、国土交通省社会資本整備審議会都市計画部会への参画と並行して、日独比較研究や市町村レベルにおける実態研究を進めることができた。具体的には、市民参加や市民による管理を基礎とした都市法制研究が進展しているドイツ法を検証する目的で、日本の都市計画法制に相応する法システムの発展動向をドイツ法の中に探り、両国制度を比較分析した。比較制度論の観点から、とりわけ協定型法システム、誘導型都市計画手法について研究を深め、国際行政法、国家法と自治体制度をトータルに視野に入れ、法システムの全体像を比較法的に解明することができた。 研究にあたっては、2015年6月にコンスタンツ大学で開催されたヴィンフリート・ブローム教授の追悼シンポジウムに参加し、その機会に、コンスタンツ大学のハンス・クリスティアン・レール教授、オスナブリュック大学のトーマス・グロース教授、フライブルク大学のライナー・ヴァール教授と長時間にわたり意見交換する機会に恵まれた。また、ハイデルベルク大学のシュミット・アスマン教授ともヨーロッパ法における法の一般原則の進展等について意見交換の機会を得た。他方、静岡県沼津市の協議会に座長として参画し、街づくりと史跡保護の問題に関して制度設計に関与し、市民参加法制に関する理論と実践の融合に関して思索を深める機会を有した。日本法制に関する理論的とりまとめとして、論究ジュリスト15号に「土地利用規制と救済」と題する論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本法制に関する理論的研究は、その成果の一部として、論究ジュリスト15号に「土地利用規制と救済」を公表することができた。これを基礎に、さらに本年度において理論面での深化を図ることが可能である。他方、実務面での成果としては、国土交通省社会資本整備審議会都市計画部会へ参画し、とりわけ、都市農業振興基本計画の策定に関与し、コンパクトシティ法制化における市街化区域内農地の保全や活用に関して、知見を深めることができた。合わせて、都市マネージメントの具体的手法として、都市公園の活用などについても意見交換の機会を有した。 他方、外国法研究を進展させ、ヨーロッパ法の影響が各国行政に及び、そうした中で、よき行政を求める権利がヨーロッパレベルで確立し、これが日本法でいう法の一般原則と重なる点を明確化することができた。この成果は、2016年に公刊予定の書物で公表する(「行政法の一般原則」小早川光郎先生古稀『現代行政法の構造と展開』有斐閣所収)。さらに、上述のシンポジウム参加を契機に、ドイツで有力に活躍している諸教授と協力関係を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、これまでの2年間にわたり実施した比較法研究、国内運用調査をふまえて、研究成果をとりまとめる。平成27年度までになお充分に分析できなかった部分、具体的には、先進的な地方公共団体による実験型まちづくり制度・都市交通政策に関して、文献を収集し、国内法に関して補充を行う。他方、ドイツでは2016年8月にコンスタンツ大学において、研究成果について意見交換を目的に研究会を実施する。同大学のハンス・クリスティアン・レール教授とは、同年3月の来日時に東京で意見交換の機会を持ち、研究協力について了解を得ている。年度の最後には報告書を作成する。このように、日独比較研究や実態研究を進め、成果を都市計画法等の改正に反映し、社会還元することを目的とする。
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