2015 Fiscal Year Research-status Report
時際法(intertemporal law)と国際立憲主義
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26380070
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
最上 敏樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70138155)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際公法 / 国際立憲主義 / 時際法 / グローバル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は着実に進行している。現在進行形のプラクティスとして大きな研究素材になりうべき、カリブ共同体(CARICOM)によるヨーロッパ諸国への奴隷貿易賠償請求がなかなか進展しないため、その部分は現実の展開待ちとなっているが、国際法史の原論的な部分では各種研究書の体系的な読破を重ね、その面では収穫の多い一年となった。すぐには成果の現れない作業工程であり、したがって当該年度は著作を数多くまとめることができずに終わったが、こうした蓄積がじきに大きな成果を生むことを確信している。 秋に事故で負傷したため、一時期は出張等の活動を大きく制約されたが、平成27年5月にはフランス・ストラスブールにおいて開催された「各国国際法学会代表者会議」(フランス国際法学会主催)にアジア国際法学会を代表して出席し、各国の代表的研究者と意見交換することができた。またその機会を利用してヨーロッパ人権裁判所判事に面談を申し入れ、同裁判所の最近の動向を聞き取るほか、今後の研究協力を協議した。なおその際、引き続き開かれたフランス国際法学会年次研究大会にも出席を招待され、現地研究者と交流を深めることができた。 前年度(平成27年2月)にベルギー・ルーヴァンで開催された国際ワークショップも、その共同研究の成果が英国から出版されることが決まり、平成27年中はそのメンバーと意見交換しながら作業を深化させ、平成28年中には刊行を予定している(それまで再度会合することもありうる)。理論的には報告者のテーマに最も関係の深い共同研究であり、作夏以降、この作業に最も大きな力を注いできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
秋の事故による負傷のために研究活動、特に海外研究者との交流がさまざまに制約されたが、理論構築に関しては構想がかなり進んだ。国際法における時間の問題を考えるということは、国際法史を組み立て直すことであり、ひいては国際法学の欧米中心的なパラダイムを変えて行くことにつながる。その構想を熟成させる作業は、事故にもかかわらず非常に順調に進めている。 自己評価を「おおむね順調」としたのは、昨年同様、こうして基礎理論構築とパラダイムシフトの理論的作業に没頭したため、著作の発表には容易に結びついていないことによる。だがこれはこの最終年度の課題であり、これまでの蓄積を一気に結実させる態勢は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は勤務先大学から特別研究期間を与えられているため、折々の海外滞在を含め、存分に研究に打ち込むことができる。とりわけ、ドイツのマックス・プランク研究所からはすでに客員研究員としての滞在が許可されており、かねてから研究上の最も強力な協力者であるアンネ・ペータース同研究所所長と共同研究の機会を多く持つことになる。 テーマはいうまでもなく、国際法史研究と国際立憲主義の結節点を見出し、それによってこれまでの国際法学が見落としてきた理論的転換の契機を探ることである。この両者の結びつけは報告者のオリジナルであるが、ヨーロッパでは次第に同じ側面に着目する研究者が現れつつあり、今後の進展の推力になると思われる。
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Causes of Carryover |
2015年10月に事故で負傷入院し、その後に予定されていた海外出張(例:同月のバンコクにおけるアジア国際法学会研究大会)をキャンセルせざるを得なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年6月にまた同学会の大会がヴェトナム・ハノイであり、他にも出張予定が進行中なので、翌年使用計画は問題なく進めることができる。
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