2015 Fiscal Year Research-status Report
効果的な再非行防止に向けた家庭裁判所と関係諸機関との連携に関する基盤的研究
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26380094
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡田 行雄 熊本大学, 法学部, 教授 (40284468)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドイツ / 暴力事犯 / 少年法の家 / 再非行予防 / 諸機関連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,日本においては,家庭裁判所と関係諸機関との連携の在り方に関する既発の論稿を整理,検討し,日本の少年司法における諸機関連携に関する研究の現状についての調査を行った。そして,前年に引き続き,高松の付添人ケース研究会にて,付添人が様々な機関と家裁との連携を促進させた事案に関する情報収集を行うとともに,非行少年支援の諸団体の連携を進める研究会にも可能な限り出席し,家庭裁判所や付添人との連携に関する情報収集を行った。また,ドイツにおいては,暴力事犯を繰り返した少年のみを対象とし,こうした少年達への適切な再非行防止策を実施するために,諸機関が連携して,裁判所における処遇選択を有意義なものにする取り組みを行っている,ケルンのHaus des Jugendrechtsなどを訪問し,その設置の経緯,再非行防止に向けた外部の就労促進機関との連携の現状と課題について調査を行った。 これらの情報収集と調査を通して,以下の諸点が明らかとなった。まず,日本の少年司法における諸機関の連携に関する研究においては,他国の少年司法における諸機関連携の在り方は必ずしも参照されていないが,少年司法手続の早期から,保護処分の終了後も見据えた連携が志向されていること。次に,家庭裁判所はこうした連携に必ずしも積極的ではなく,その論拠として,家裁が全国で統一的で公平な対応を求められるなどの事情があること。また,ケルンのHaus des Jugendrechtsは,暴力事犯を繰り返した少年の再非行防止に成果を挙げている一方で,非行少年への援助機関と捜査機関とが同居しているために,少年達への援助が必ずしもスムーズに進められていないなどの諸課題があること。 以上の作業も踏まえて,日本の少年司法における諸機関連携に関する研究の到達点とドイツ少年法の家の設立経緯や特徴を明らかにした論文を公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の家裁調査官などへのアンケート調査等を実施できなかったが,日独における情報収集と調査,及び文献研究を通して,日本における家庭裁判所を中心とした諸機関連携の現状と課題は概ね明らかとなった。加えて,ケルンのHaus des Jugendrechts等の訪問調査などによって,ドイツにおける暴力事犯を繰り返した少年に対する諸機関連携の実際を調査し,ドイツの少年司法における,暴力事犯の非行少年の再非行防止に向けた諸機関連携の現状と課題を把握するなど,日独における研究を計画通りにスムーズに進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,第一に,これまでに研究会などで知り得た,非行少年の再非行防止に向けた家庭裁判所,弁護士付添人と関係諸機関との連携の実践例に基づく,家庭裁判所と関係諸機関などとの連携における課題を抽出した,本研究の中間報告としての意味を持つ書籍の発行を目指す。 第二に,これまでに抽出された課題への取組みに向けて,日独の少年司法における再非行防止に向けた諸機関連携の前提条件の相違点,及び,日本国憲法,子どもの権利条約,障がい者の権利条約などの上位規範や少年司法の基礎理論に照らして適正で,かつ,再非行防止と言う目的に照らして効果的な連携の在り方について,文献の調査による検討を加える。 第三に,これまでの研究成果を学会や研究会等で積極的に報告し,最終年度に向け,必要な見直しなどを行う。 第四に,これまでの研究を通して,ドイツの少年法の家など,諸機関連携の拠点の在りようがそれぞれに異なっており,日本における諸機関連携の在りようも様々なものがあることから,アンケート調査に必ずしもなじみにくいことが明らかとなったので,家庭裁判所調査官などの少年司法の担い手と,少年司法の外延に位置する個々の連携拠点の担い手への聴き取り調査を引き続き行い,適正かつ効果的な連携を実践するために必要な取り組みを明らかにすることに向けた情報収集を行う。
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Causes of Carryover |
次年度分を使うための手続の締切が経過した後に,情報収集のために参加する研究会の数が当初予定以上に増加したため,残額が足りなくなり,参加すべき研究会への参加旅費として使用できなくなったために生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度発生した昨年度使用額は,旅費として次年度使い切る。
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