2016 Fiscal Year Research-status Report
効果的な再非行防止に向けた家庭裁判所と関係諸機関との連携に関する基盤的研究
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26380094
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡田 行雄 熊本大学, 法学部, 教授 (40284468)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドイツ / 少年法の家 / 諸機関連携 / 少年司法 / 弁護士 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,ドイツについては,ドイツ少年法の家における諸機関連携の成果を検証した諸文献の検討作業と,公的機関としての少年法の家と同様の機能を持つ,旧東独地域のゲーラにある少年ステーション,及び,同じく旧東独地域のコトブスにある民間の少年法の家を訪問し,それぞれにおける諸機関連携の調査を行った。日本については,引き続き,各種の研究会に出席し,個別の少年司法における諸機関連携事例に関する情報を収集するとともに,関連文献の収集とその検討・分析を行い,少年司法における諸機関連携の課題を抽出する作業を行った。 これらの研究を通して以下の諸点が明らかとなった。まず,ドイツ少年法の家における諸機関連携の成果検証のレベルは,迅速性の実現に力点が置かれているものの,日本における諸機関連携の検証よりははるかに高いものであること。そして,ドイツの公的機関としての少年法の家における諸機関連携と民間の少年法の家におけるそれとでは,その在り方に違いがあること。さらに,ドイツ少年司法においては,個人情報保護の諸規定が,諸機関連携の足かせとなっていること。日本の少年司法における諸機関連携事例に鑑みると,いずれの連携事例においても核となるキーパーソンが存在しているが,それは諸機関の担い手と信頼関係を結ぶことができる,地域に根を張った者であること。そして,上意下達式の諸機関連携では,少年の立ち直りに向けた支援などに切れ目が生じがちなために,そこで再非行などの問題が生じるのであり,これを防ぐには関係機関がヨコ型でつながることが必要であること。 以上の諸点を踏まえて,日本の少年司法における諸機関連携事例とドイツの公的機関としての少年法の家及び民間の少年法の家の調査に基づく単行本と,ドイツの公的機関としての少年法の家における諸機関連携の在り方とその検証成果の意義を明らかにした論文を公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンケート調査と言う形は取れていないが,ドイツ少年司法における諸機関連携の検証研究の分析を通して,当該研究においてなされたアンケートを参照することができ,前年度までの研究成果を踏まえ,再非行を繰り返す少年によるケースを中心として,その効果的な再非行防止に向けた家庭裁判所と関係諸機関の連携の在り方についての検討が進み,一定のモデルの提示にまで至っていること。そして,ドイツと日本の比較の中で,日本の少年司法における諸機関連携を進める上で,個人情報保護や日本特有の家庭裁判所調査官の異動などが,その足かせとなっているという分析まで行えたこと。さらには,日独の少年司法における諸機関連携事例を手がかりに,諸機関連携のモデルの提示を行うことができたこと。 以上の諸点に照らして,本研究はおおむね順調に進ちょくしていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に,少年司法における諸機関のヨコ型連携モデルの妥当性を,さらに日本国憲法や子どもの権利条約,さらには障がい者の権利条約などの上位規範や,再非行を繰り返した少年に対して関係機関の連携が図られた事例に照らして理論的・実証的に検討し,当該モデルの詳細を明らかにする。 第二に,こうした少年司法における諸機関連携のモデルとその連携を機能させる鍵となる担い手について,日独の諸学会において報告することを通して,客観的な検証に耐えるものとする。 第三に,これまでに明らかとなった,少年司法における諸機関連携の足かせとなりうる,個人情報保護や日本における公務員の異動政策を踏まえて,日本の少年司法における,あるべき諸機関連携の実現に向けた理論的・実践的課題を克服するための方策を検討し,これをまとめの論文として公表できるようにする。 以上の課題に取り組むために,補充的な文献収集と聴き取り調査などを行い,研究の最終年度にあたり遺漏が生じないようにする。
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Causes of Carryover |
年度内に購入しようとした書籍の発行が遅くなり,年度内の物品費で処理できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は,このようなことが内容にいくつかの書籍を購入対象としてストックしておくことで,計画的な科研費の使用に努める。
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