2015 Fiscal Year Research-status Report
現在日本の商品先物市場および商品先物取引法制の在り方をめぐる研究
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26380138
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
尾崎 安央 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30139498)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 商品先物取引 / 総合取引所 / 香港証券取引所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度におけるもっとも重要な知見の獲得は、香港出張によって得られたものである。 香港市場に造詣の深い日本の商品先物取引関係者のコーディネートのもと、商品先物取引法の共同研究者の同行も願って調査を実施した。香港は、アジア市場における日本の最大のライバルともいうべき地位にあり、本研究課題である商品先物市場の在り方を検討するうえで重要な研究対象である。たとえば、証券取引と商品先物取引などをワンストップで行うことができる、いわゆる「総合取引所」として日本に先行している。香港市場については邦語や英語の文献による紹介等があり、それらを調査分析する作業を行っていたが、取引委託や取引執行の実態など不明の部分があり、年度末に香港の規制機関、取引所だけでなく、仲介業者への聞き取り調査を行い、実態を可能な限り詳細に把握することとした。現地業者に対する聞き取りでは、その資金の多くが中国本土から集まっており、本土の厳格な法規制を避ける投機資金の運用という側面で香港市場が成り立っていること、それゆえ物流拠点というよりもマネーの拠点という要素が強いことなどが分かった。また顧客の債務不履行リスクを回避する手法などの解説を直接に受けることができ、文献に表れていない香港の実態を知ることができた。取引所についても、HPで開示されている政策等についての疑問点を直接担当者から聞く機会が得られ、ロンドンメタル取引所(株式資本を有する無限責任会社)を子会社化したことの法制度上の問題点などを含め、多方面からインタビューした。東京商品取引所との比較研究にとっての重要な資料を獲得できた。規制当局とその関連機関への調査では、日本の縦割り行政との比較において有意義な情報が得られ、参考資料もいくつか入手した。現在はそれら資料等の分析中であり、成果は今年度中に論文の形で公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本の法制度等の比較対象として香港市場に関する情報を入手できたことは大きい。しかし、「総合取引所」という大まかなくくりではなく、いわば各論的な検討について、比較対象となった香港の法制度及び実務における「柔軟性」をどこまで取り入れることができるかの分析検討が未了であることと、日本の商品先物市場が物流を中心に考えられてきた歴史があるが、その「価格発信力」を重視という点で香港の取引所や規制当局の姿勢をどのように評価するかが未了であることなどが、遅れていると考える理由である。ワンストップ型の香港の実態はいわゆる縦割り行政とは違った多くの示唆を与えているが、ライバル関係にある日本法の在り方に、それらをどのように参考とするのかの検討が課題であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
香港の状況を整理し、「総合取引所」というと、取引所の総合化だけが議論される傾向にあるが、証券・商品などの仲介業者の一元化、外務員などの従業員資格試験の統合など、香港の実態から得られた示唆を咀嚼して、日本の商品先物市場の在り方に対する提言を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
日本市場の比較対象として中国市場の研究を行う計画をしていたが、当初は過年度までに、穀物・農産物先物市場の関係で大連取引所とその受け渡し関係施設等の実地調査を予定していた。しかし、研究の進展において、香港市場の調査研究が先行することになったため、大連での調査が未了となっているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
香港市場のまとめのために若干の費用を予定しているが、日本市場のライバル市場として農産物関係の調査も不可欠であると考えており、中国、大連における調査を計画している。
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