2014 Fiscal Year Research-status Report
イランにおける民主化・ポスト復興主義運動と経路依存性の研究
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26380163
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
松永 泰行 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20328678)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 権威主義体制 / 改革運動 / イデオロギー / 新制度論 / イラン / ホメイニー / 民主化 / 党派政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、選挙を行う権威主義体制としてのイラン・イスラーム共和国体制の民主化過程の研究に、社会科学における新制度論の手法と知見を導入することで、イデオロギー的権威主義体制において、根本的(ラディカル)な変革を求める運動とは異なる制度内的改革運動が直面する困難さの理論的および政治的な背景を浮き彫りにすることを目的としている。 本研究の重要性については、2013年にロウハーニー大統領が成立し、イラン国内において改革への希求が再び高まっている文脈において、イランのようなイデオロギー的権威主義体制の改革の困難さを、理論的および実証的な手法で研究する世界的にも数少ない研究の一つであると位置づけられる。 初年度である本年度は、年度当初において①イランの権威主義体制の維持の新制度論的な検証のための現地調査および1次資料の収集、②研究のための理論的枠組みと分析モデルの構築、という目標を設定し、調査研究作業に入った。 第1の目的(①)については、6月に現地調査を行うとともに、ペルシア語文献資料(新聞雑誌および図書)の収集を、年間を通じて行った。第2の目的(②)については、Peter Hallを中心とする歴史的新制度論および、Paul DiMaggio他の社会学的新制度論の研究業績の吸収を進め、行動主体中心的で権力闘争を核とする既存のイラン政治分析の枠組み(「党派政治」論)に取って代わる、「ホメイニズムの制度的遺産」の下で行われる争議政治過程の分析モデルの構築を進めた。さらに、これらの暫定的な研究成果を、10月の日本オリエント学会年次大会、11月の日本中東学会公開講演会で報告した。 本年度の研究成果の意義としては、新たな分析枠組みとしての「ホメイニズムの制度的遺産下の争議政治」をより説得力を持った形で提示するための基盤作りが進んだことが挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の全体的な研究目的の下、初年度については、①イランの権威主義体制の維持の新制度論的な検証のための現地調査および1次資料の収集、②研究のための理論的枠組みと分析モデルの構築、という二つの具体的な目標を設定した。 第1の目標については、2014年6月にイランにおける現地調査(テヘランおよびホメイニー廟)と1次資料収集を行い、その後も年度末までペルシア語の図書・雑誌・新聞等の1次資料の収集を継続的に行った。 第2の目標については、Peter Hall の業績を中心に、「政策パラダイム」と呼ばれる制度化された支配的なディスコースの折合い(terms)が果たす制約的な役割に注目した歴史的新制度論および、Paul DiMaggio の業績を中心に社会学的新制度論の研究業績の吸収を進め、行動主体中心的で権力闘争を核とする既存のイラン政治分析の枠組み(「党派政治」論)に取って代わる、「ホメイニズムの制度的遺産」の下で行われる争議政治過程の分析モデルの構築を進めた。 上記を踏まえ、暫定的な研究成果を、10月の日本オリエント学会年次大会において「「遺産」としてのホメイニズム再考」として、また11月の日本中東学会公開講演会において「革命の改革、革命への抵抗: イラン革命と経路依存」として、報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような初年度の成果を基に、次年度においては、①引き続き1次資料の収集を続けると同時に、研究補助者を雇用し資料整理を進め、②研究のための理論的枠組みと分析モデルの構築を完成に近い段階にまで進めることを目指す。 さらに初年度と同様に、国際シンポジウム(4月にシドニー大学で開催される「Cultures of Freedom and Contending Visions of Justice and Governance in the Muslim World 」等)や関係学会における研究報告や論文投稿の機会を利用し、暫定的な成果を提示し、フィードバックを得ることを通じて、理論的枠組みおよび分析モデルが実際に実証分析と社会科学的な説明に資することを確認することを目指す。 また環境が許せば、イラン国内における現地調査についても実施する方向で計画を進める。
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Research Products
(4 results)