2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380173
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上神 貴佳 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (30376628)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 英敬 香川大学, 法学部, 教授 (20314908)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 政治学 / 現代日本政治論 / 政治制度 / 政党研究 / 自民党 / 総裁選 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、昨年度に引き続き、「総裁選における国会議員の支持動向調査」と、「属性データの収集・補完」を主として行うことを目標としてきた。以下、本年度における研究の経過を簡潔に説明する。 「総裁選における国会議員の支持動向調査」については、26年度、データの収集が大幅に進んだ。しかし、27年度は研究代表者の異動に伴い(高知大学から岡山大学へ)、研究補助の学生を含む研究の態勢を再構築しなければならなくなった。とりわけ、学生の雇用と労務管理のルールが大学間で異なること、学生にとっての雇用機会が別途豊富にあることなど、前任校と環境が変わってしまい、本研究の遂行にとっては大きな障害となった。結果として、学生の雇用とその定着のための試行錯誤に大きな労力を割くことになり、支持動向調査については、大幅な進展を見ることはできなかった。 他方、「属性データの収集・補完」については、本データと東大・朝日調査をマージし、分析することにより、新しい知見を得ることができた。本研究との関連では、政党の制度化に関する国際比較研究に招待され、自民党内における派閥の衰退と執行部権力の増大を検証することになった(この分析は研究分担者として追加した堤英敬氏と共同で実施した)。その結果、(他の要因をコントロールしても)新人議員は無派閥を選択する傾向があること、政策的な一致が総裁への支持につながる傾向があることを明らかにした。これらの結果は、総裁選出過程の変容と軌を一にしており、とりわけ派閥選択の分析結果は本研究の進展にとって重要である。なぜなら総裁選の投票選択モデルにおける派閥所属を内生変数として扱う必要を強く示唆するからである。今後のデータ分析に生かしていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度から継続している課題、「総裁選における国会議員の支持動向調査」と、「属性データの収集・補完」について、それぞれ達成度を評価する。 まず、「総裁選における国会議員の支持動向調査」については、前述の通り、大きな進展はなかった。ただし、新任校における状況を踏まえて、研究の態勢を整えることに注力した結果、27年度末までにはデータの収集を再開することができた。現在、衆議院議員は1991年から2012年まで、参議院議員は2006年から2012年まで、それぞれデータを収集し、コーディングの間違いをクリーニングするための確認作業を進めているところである。今年度は確認作業を進めるにとどまっている。 また、「属性データの収集・補完」については、東大・朝日データとのマージを行い、とくに政策選好に関するデータを補充することができた。その結果、総裁に対する評価を決定する要因として、派閥所属と並んで政策が重要であることがわかった。これにより得られた知見は、総裁選出過程において派閥所属がより重要でなくなると考える本研究の予想と一致しており、研究の方向性に関して、属性データから傍証が得られたことは大きな進展といえる。 以上から、支持動向の調査においては大きな障害に直面し、予定していた作業が滞ったが、遅れを挽回するための態勢を整えたこと、属性データについては、新しいデータの補充とその分析により、本研究の予想を支持する重要な知見を得ることができたこと、この二つが大きな進展である。したがって、やや遅れているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の計画の進捗状況をふまえて、平成28年度における研究の推進について、その方策を述べる。 1 データ・セットの完成 これまで述べてきたように、27年度は研究代表者の転勤に伴う作業の中断と再開、研究の態勢の再構築に時間を要した。そこで、27年度中から研究補助の学生の雇用と労務管理の方法を試行錯誤して、研究の再開に注力してきた。具体的には、研究補助のために複数名の学生を雇用し、シフト制によって勤務時間を管理する、机・椅子やPC、ワイヤレスLANなどの作業環境を整えるといった工夫を行い、ようやく作業が進むようになった。引き続き、現在の研究の態勢を維持してデータ・セットの早期完成を目指す。 2 総裁選における投票行動の分析 支持動向調査の完了後、速やかにデータを分析する。その際、27年度の試行的な分析の結果が示唆するように、派閥選択を内生化するモデルを採用する。何らかのマルチレベル分析を適用することになるはずである。 3 自民党衆議院議員の属性データの分析 すでに結合した東大・朝日データに加えて、当初より予定していた『国会議員データベース―自由民主党・衆議院議員編』(品田他、丸善)を結合する。総裁選候補者の属性を時系列的に分析し、変化の有無を検証する。 上記のとおり進めることにより、自民党総裁選出過程の変容を派閥の衰弱で説明できるか検証する。分析の結果を日本の選挙研究、政党研究にとどまらず、比較政治学的な政党研究の文脈において解釈し、貢献することを目指す。
|
Causes of Carryover |
平成27年度は研究代表者の異動に伴い、研究補助の学生を含む研究の態勢を再構築しなければならなくなった。そのため、研究計画全体が影響を受け、研究費の執行において残額が生じることになった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記遅れの影響をとくに受けたのが研究補助の学生によるデータの収集であるため、労務謝金や業者へのデータ入力委託費として執行することを予定している。
|
Research Products
(1 results)