2016 Fiscal Year Research-status Report
フランスの自治体間協力型広域行政組織における(直接/間接)民主主義改革の研究
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26380178
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
中田 晋自 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60363909)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コミューン間協力型広域行政組織 / 2014年のメトロポール改革 / 2014年のMAPAM法 / リール・ヨーロッパ・メトロポール / 開発評議会 / リール市 / レンヌ市 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスにはいまなお3 万6 千余りのコミューン(市町村)が存在し、多くの小規模コミューンでは政策遂行能力の欠如が懸念されるが、同国では市町村合併ではなく、「コミューン間協力型広域行政組織(EPCI)」と呼ばれる制度枠組みの活用でこれに対応している。特に同国では課税自主権を有するEPCIがその数と影響力を拡大しているが、その組織運営をめぐっては「民主主義の赤字」問題が指摘され、構成コミューンの市町村会議員を評議員とする「共同体評議会」の民主化改革が現在進行中である(2014年3月の全国一斉コミューン議会選挙ではコミューン議会議員と共同体評議員を同時に選出する新しい投票方法を採用)。本研究の目的は、同国のEPCI の住民による民主的統制の強化へ向けた法制度改革の動向を直接民主主義/間接民主主義の両面から把握するとともに、直接民主主義的制度を導入しているEPCI を対象とした現地実態調査を実施するなど、これを制度・理論・実態の諸側面から多面的に検討することにある。 平成28年度における研究は、「地方公共活動の近代化およびメトロポールの確立に関する2014年1月27日の2014-58号法律」(以下MAPAM法と表記)に基づき実施された「メトロポール改革」の全体像を明らかにした前年度までの研究を踏まえ、本研究の調査対象地域であるリール市を中心コミューンとする「リール・ヨーロッパ・メトロポール」(以下MELと表記)においてどのような対応がおこなわれているのかを引きつづき調査するとともに、本研究の調査対象地域として設定していながら、これまで訪問できていなかったフランス北西部・ブルターニュ地域圏の州都レンヌ市においても予備的調査をおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、その3年目を終えた現段階において、おおむね順調に進展しているといえる。 というのも、本研究の3年目に当たる平成28年度は、EPCIの代表制機関(共同体評議会/メトロポール評議会と呼ばれ、構成コミューンの議会から派遣される代議員により組織)とは別に、地元の企業や各種団体・市民社会組織が参加する「開発評議会」を設置し、様々な専門分野に関する政策の立案や実施後の評価をおこなっているMELが、この開発評議会をどのように位置づけ、運営しているのかについて、MELから提供を受けた資料(MELと開発評議会との関係を改めて整理するため、両者が2015年4月に締結した「リール・メトロポール・ヨーロッパとその開発評議会の間の協力枠組み」)を検討するなかで明らかにするとともに、本研究のもう一つの調査対象地域に設定したレンヌ市を初めて訪問し、今後の調査活動のための予備的調査を実施するなど、本研究の課題を推進したからである。 なお、当該年度における研究の成果は、【資料・翻訳】および【論説】として公刊され、次年度の研究へと繋がるものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度(平成29年度)は、EPCIにおける「(直接)民主主義の赤字」問題の解消へ向け調査対象地域(レンヌ市)ではどのような市民参加促進の取り組みが行われているのかに関して、現地調査を進めていく。 平成29年度に関しては、次の3つを主要な課題とする。 1.関連する資料・文献の収集(最新資料・文献の補填):フランスに渡航した際には、資料・文献へのアクセスにおいて条件の整っているパリ市において引きつづきそれらの収集作業をおこなうことで、最新資料・文献の補填に努める(国立図書館、政府刊行物資料館、大型専門書店)。 2.ピカルディ大学法政学部フランソワ・ランジョン教授との面会 3.レンヌ市における地域民主主義改革の実施状況に関する現地調査
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Causes of Carryover |
フランスの「コミューン間協力型広域行政組織(EPCI)」がどのような実態にあるのかに関する現地調査を課題の一つとする本研究では、4年計画で3つの自治体(アミアン市・リール市・レンヌ市)を調査することになっている。平成26年度における予備的調査(さしあたりアミアン市とリール市)を踏まえ、平成27年度は主に「リール・ヨーロッパ・メトロポール」の本格的な現地調査をおこなった。そして平成28年度は、それまで調査できていなかったフランス北西部・ブルターニュ地域圏の州都レンヌ(同市役所)を訪問するとともに、アミアン市についても、同市の市役所を訪問し、さらに同市にあるピカルディ大学のフランソワ・ランジョン教授とも面会することができた。その結果、当該年度の「支払請求額」である60万円についてはほぼ計画的に執行できたが、前年度未使用だった約20万円については、引きつづき執行残となってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度にあたる平成29年度に向けては、昨年度予備的調査を実施したレンヌ市について本格的な現地調査を実施することで、予算の計画的で実効的な使用に努めていく所存である。
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