2015 Fiscal Year Research-status Report
在京米大使館のインテリジェンス活動と対日政策決定への影響の政治史的分析
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26380187
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
信夫 隆司 日本大学, 法学部, 教授 (00196411)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 在京米大使館 / インテリジェンス / 国務省 / 密約 / 沖縄返還 / 事前協議制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、まず、在京米大使館のインテリジェンス活動に関する一次資料の収集に力点を置いた。米国メリーランド州カレッジパークにある米国立公文書館を以下の日程で訪問し、資料の収集をした。第1回平成27年7月27日から8月3日、第2回平成27年8月24日から8月31日、第3回平成28年1月5日から1月11日、第4回平成28年3月14日から3月21日である。 平成27年度は、昨年度同様、おもに在京米大使館が作成した文書ならびに本省へ送付した電報を収録したRG84 Japan; U.S. Embassy, Tokyo; Classified General Records, 1952-1963の資料を収集した。このシリーズは、120ボックスほどあるが、今年度は、ボックス番号4, 9-14, 17, 19-21, 23-24, 27, 30, 32-37, 39, 41-42, 44-49, 51-58の資料を収集した。そのほか、収集した資料の主なリコードナンバーだけを挙げると、RG59 Decimal File 1950-54; RG59 Central Decimal File 1955-1959; RG59 Central File 1967-1969等である。 資料収集とは別に、研究業績として、「日米安保条約にもとづく事前協議制度の原型」「在日米軍の刑事裁判権放棄に係る日米密約の原型」「沖縄の施政権移行期に交わされた密約」が公刊された。拙著『日米安保条約と事前協議制度』に加え、今年度の研究では、在日米軍の刑事裁判権について、在京米大使館と外務省との交渉過程の詳細が明らかになった。また、これまで明らかにされなかった沖縄の施政権移行期における新たな密約も解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集の面は、おおむね順調に進展している。ただ、資料収集は限りがないので、収集した資料の分析の結果、あらたな資料収集をおこなわなければならないことが多々あり、今後、これには可能な限り対応したいと考えている。 分析の面では、事前協議制度、あるいは、行政協定の改定(刑事裁判権)ならびに国連軍協定の交渉において、在京米大使館が果たした役割についてじょじょに解明が進んでいる。ただ、在京米大使館自体はもともとインテリジェンス機関というわけではないので、いわば日常的な情報収集ならびに交渉等を分析の対象とし、今後、研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究計画にもとづき、まずは、これまで同様、米国立公文書館を可能な限り訪れ、研究に必要な資料の収集に努めたいと考えている。 同時に、これまで多くの資料を収集したので、その分析作業も進めたい。これまで、行政協定の刑事裁判権条項改定の交渉過程を明らかにしたので、その具体的かつはじめての適用例といえるジラード事件(1957年)に焦点をしぼり、研究を進めていきたいと考えている。 さらに、本土復帰のさきがけとなった奄美返還(1953年)、小笠原返還(1968年)、沖縄返還(1972年)を総合的に検証し、在京米大使館の果たした役割について明らかにしたい。 また、本研究計画の変更点としては、すでに明らかにしたように、在京米大使館はもともとインテリジェンス機関というわけではないので、その日常的な活動それ自体はとくに注目を集めるものではない。そこで、日本がその主権を回復した以降における、主要な日米交渉のなかで、在京米大使館が果たした役割、位置づけを中心に、今後は研究を進めたいと考えている。
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