2014 Fiscal Year Research-status Report
ジェームズ・ステュアートの貨幣的経済理論成立過程の研究
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26380255
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古谷 豊 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00374885)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済学史 / 重商主義 / 草稿研究 / ステュアート / ダヴナント / クセノポン / ヒューム / リシュリュー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、経済学が誕生して今日の姿にまで発展してきたなかで、とても重要な役割を果たしたジェームズ・ステュアートの経済理論を研究するものである。このような経済学説史の研究では、その時代を画した経済理論がどのように成立したのかを草稿や書簡、関連資料から明らかにしていく作業が欠かせない。ところが様々な事情によりステュアートについては草稿研究が著しく立ち後れてきた。ステュアートの草稿については、近年ようやく体系的に研究資料として整備されてきつつあり、我が国が中心になって推し進めている。 本研究では、近年の我が国を中心としたこの取り組みをもとに、ステュアートの草稿研究を開拓して海外学会と海外ジャーナルで発表していく。これは、日本で積み重ねられてきた貴重な基礎研究とその意義を、海外の研究コミュニティーに紹介していくことにもなる。 初年度の平成26年度は、ステュアートが古代クセノポンの財政論について作成した注釈資料の草稿を検討することで、ステュアートの主著『経済学原理』がクセノポンの著作の検討により書き換えられていった過程を解明することができた。加えて、ステュアートの経済理論の成立過程では、実は古代経済論が重要な役割を果たしており、それがとりわけ、当時の自由主義的な経済論の狭隘さを浮き彫りにするうえで効果を発揮していることを示した。 これらの成果は9月にロンドンで開催された46th Annual UK History of Economic Thought Conferenceで報告し、高い評価を受けることができた。現在は海外のジャーナルに投稿するための作業をほぼ終えつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は順調に進み、とても実りの多い研究成果をあげることができた。 重要古典である『経済学原理』の本文が、どのような検討過程で現在の姿になったのかを具体的な変化とともに明らかにできたことは、非常に価値のあることである。さらにまた、ステュアート研究のなかで従来ほとんど着目されてこなかった、古代経済論の重要性を明らかにできたことも価値のある成果である。 海外の報告の場としてUK History of Economic Thought Conferenceで議論できたこともよかった。このカンファレンスは海外の学会報告の中でもとくに質の高い議論ができる場だが、それだけにこの成果について充分に高く評価され、多くの関心を寄せていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
一年間取り組んでみて、改めて、本研究課題が重要であり、また求められているものであることが認識できた。現在のところ、計画に大きな瑕疵は見当たらないので、これからもできるだけ計画通りに研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当初計画していた費用に対して交付金額が約7割であったため、そのことを踏まえて計画を組み直す必要があった。その際に、交付金額にあわせて研究計画を縮小させるのか、あるいは自前の研究資金を組み込んで当初の計画の全部を遂行するのかを検討した。 この研究課題は重要であり、今求められていることであるので、可能ならば自前の研究資金を組み込んで、できる限り計画の全部に取り組むべきであると判断した。そこで本年度に、海外旅費や英文校正費などを自前の研究資金でまかなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に自前の研究資金を多く投じたことで、次年度以降(研究期間の2~4年目)に、申請時の計画に則した研究活動を行えるようにする。なるべく、今までの研究交流のなかで手薄となっていたアメリカの研究コミュニティーと交流を持ち議論できるようにしていく予定である。
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