2015 Fiscal Year Research-status Report
ジェームズ・ステュアートの貨幣的経済理論成立過程の研究
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26380255
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古谷 豊 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00374885)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済学史 / 重商主義 / 草稿研究 / ステュアート / ダヴナント / クセノポン / ヒューム / リシュリュー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、経済学が誕生して現在の姿にまで発展してきたなかで、その誕生時にとても重要な役割をはたした経済学者、ジェームズ・ステュアートの経済理論を研究するものである。本研究では、近年の我が国を中心としたこの取り組みをもとに、ステュアートの草稿研究を開拓して、海外学会と海外ジャーナルで発表していく。これは、日本で積み重ねられてきた貴重な基礎研究とその意義を、海外の研究コミュニティーに紹介していくことにもなる。 二年目の平成27年度は、17世紀末から18世紀初頭に活躍した経済学者、チャールズ・ダヴナントのAn Essay on the Ways and Means of Supplying the War (1694)とDiscourses on the Public Revenues, and on the Trade of England (1698)に対して、ステュアートが書き記した注解の草稿資料の検討を進めた。国の財政支出を税収でまかなうことができないときに、どのような形で公債を発行すべきか。当時はとりわけ戦争費の調達のために、この課題はとても重要であった。この課題に対して、ダヴナントとステュアートはまったく異なる見解を示している。 しかし興味深いことに、ステュアートはダヴナントの見解を、誤っているとは言わずに、当時の状況では正しい見解だった、と述べる。ではどういう時代状況の相違があって、見解の相違が生じたのか、そもそも二者の見解はどのように異なるのか、ステュアートはそこからどう理論を組み立てたのか、このステュアートの公債論は彼の経済理論とどのように関わっているのか。たくさん提起されうる課題のうち、いくつかは平成27年度の研究で明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
草稿の検討については、計画を立てて着実に進めることができた。他方で、検討途上の内容について、平成27年9月にThe European Society for the History of Economic Thoughtと経済学史学会とのジョイント・カンファレンスで報告する予定だったが、これは家庭の事情でキャンセルした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にクセノフォンとステュアートのつながりについて、二年目の平成27年度にダヴナントとステュアートのつながりについて、検討を進めてきた。このように進めてきたなかで、課題の一つ一つが、当初予想していた以上に大きいことが分かってきた。当初の計画では平成28年度はヒュームとステュアートのつながりについて検討を進める予定だったが、海外に発信する上でも、平成28年度はクセノフォンとステュアート、ダヴナントとステュアートについて追加調査をして固めていくべきであろうと判断している。
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Causes of Carryover |
本研究課題全体について、当初計画していた研究費用に対して交付金額が7割であった。初年度時に、そのことをふまえて計画を組み直す必要があった。方法は二つで、交付金額に合わせて研究計画を縮小させるか、あるいは自前の研究資金を組み込んで、当初の研究計画全体を遂行するか、である。後者を選択して、初年度の海外旅費や英文構成比などをすべて、自前の研究資金でまかなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に自前の研究資金を多く投じたことで、研究期間の後半(3~4年目)に、新生児の計画に則した研究活動を進めることができる。本年度はアメリカで開催されるHistory of Economics Societyで研究報告をし、可能であればヨーロッパから研究者を招いて、当該研究の進展を図りたい。
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