2015 Fiscal Year Research-status Report
中小企業育成政策における金融支援プログラムの効果―マレーシアのケース―
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26380321
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中川 利香 東洋大学, 経済学部, 教授 (60450532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中小企業 / マレーシア / 雇用促進 / 生産性 / 中小企業政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、①マレーシアにおける開発金融機関(DFIs)の貸出動向、②マレーシア府が発表した中小企業センサスを利用して、中小企業の特徴を明らかにした。 ①に関して明らかになった点は次の3点である。第1に、資産ベースでみた規模は、銀行システム全体の10~12%程度である。第2に、資産運用面では中央銀行監督下のDFIsは主に貸出に回っているのに対し、政府監督下のDFIsは投資が主であった。第3に、産業別貸出をみると、消費者金融と不動産部門への貸出比率が高く、商業銀行等と変わらないことが明らかになった。 ②に関して明らかになったのは次の3点である。第1に、固定資産の保有状況とローンアクセスには正の相関が確認できた。第2に、女性の労働参加と産業レベルの利益の間には正の相関があった。特に、パートタイムではなく、正規雇用の女性が産業の利益に貢献する傾向があった。第3に、コブ・ダグラス型生産関数の分析においては、中小企業は収穫逓増であることが明らかになった。これらの分析結果より、本研究では政策インプリケーションを導出した。まず、労働面において女性の労働参加率を引き上げることが求められる。政府は女性の労働参加率が周辺ASEAN諸国よりも低いことを認識しており、保育所の設置や企業における女性の就労時間の柔軟化、在宅勤務の導入を奨励している。これらの取り組みは望ましい方向にあり、今後も継続することが求められる。また、中小企業による固定資産の保有を奨励する策を講じることが望まれるだろう。固定資産取得のための資金支援や、固定資産取得および売却に関する税の減免なども有効であると考えられる。本研究は簡易的な分析にとどまっているため、個票データを収集し、詳細な分析を行う必要がある。詳細な分析は今後の研究課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通りに進んでおり、現状の進捗状況はおおむね順調であるといえる。今年度は、マレーシアの中小企業の特徴を明らかにした。①に関する研究成果は既に発表している。②に関する研究成果に関しては今後発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法は、研究計画の通りとする。ただし、サンプルを増やす必要があるためデータ収集も継続する。
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