2016 Fiscal Year Research-status Report
途上国における経済発展と多面的貧困形態の変容に関する実証研究
Project/Area Number |
26380341
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
上山 美香 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (90635640)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 経済発展 / 途上国 / 貧困 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に、MDGs(ミレニアム開発目標)が期限を迎え、これまでの貧困削減、その他開発目標への到達が評価される中で、今後15年の開発目標であるSDG(持続可能な開発目標)の目指す世界観、開発目標も徐々に具体化されてきた。そこから見えるのは、環境政策に重点を置きつつも、MDGsを超えた、より一層、個々人の幸せ、多様性、選択の自由を重視した、(途上国に限らず)世界全体での貧困問題への多面的な貧困問題への取り組みである。 そのような国際社会の動向を踏まえ、本研究では、さまざまな国際統計、マイクロデータを用い、途上国における所得貧困と教育、健康、ジェンダー格差等の状況について、各国・地域の動向を整理し、その時系列的な変遷を追うことで、経済発展と貧困形態の変容の関連性を検討し、MDGsの成果の評価を行っている。 その結果、特に、これまで文化的要素が強く、地域固有の固定的な特徴を持つとされてきたジェンダー格差に関して、経済発展や政策的要素(MDGsに伴う政策変更、大量の援助プロジェクトの投入)により、各国・地域のジェンダー格差の特徴にかなりの変化が見られることが明らかになった。具体的には、従来女性への不平等が大きいとされる南アジアの各国において、経済発展による所得効果、MDGsへの国際的な取り組みの強化等による政策効果の両面から、基礎的な供給サイドの問題、たとえば基礎保健(予防接種接種率、栄養失調率など)、基礎教育(初等教育就学率)への女性へのジェンダー格差が減少傾向にあることが明らかとなった。一方で、人々の意識の変化が必要となる需要サイドの項目と考えられる出生時人口性比や高等教育への就学、労働(賃金)などについてはいまだ格差は固定的であり、変化が乏しいことも明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MDGsの成果の定量的評価、新しい開発目標であるSDGsのコンセプト、具体的項目が、非常に幅広く、関連する開発指標、統計が非常に膨大であるため、「多面的貧困」の「多面性」が予想以上に分野を超えて跨ってしまい、それをどう整理し、分析していくかの検討に多大な時間を要したため、実証研究の進捗が遅れてしまい、これまでの遅れを取り戻せない状態が続いてしまったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに整理した文献、国際統計資料、マイクロデータによる分析結果を整理し、経済発展と貧困政策が各国・各地域の多面的貧困状況とどのような関連性を持つのか、その共通性と差異に関する国際比較分析を行っていく。
|
Causes of Carryover |
実証研究の進捗の遅れに伴い、学会発表、論文の英文校閲、当行にかかる経費が未使用であるため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会発表、論文英文校閲、論文投稿といった研究成果の報告のために用いる。
|