2018 Fiscal Year Annual Research Report
Is the long life medical care system successful in controlling medical expenditure?
Project/Area Number |
26380351
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
岡村 薫 熊本学園大学, 経済学部, 准教授 (70581974)
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Project Period (FY) |
2015-03-01 – 2019-03-31
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Keywords | 死亡時点の医療費 / 生存者の医療費 / 国民医療費 / 集計されたデータ / 寿命の伸びの頭打ち / 終末期医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会が進展する国において医療支出の増加は財政上の課題である。これまでの研究が分析の対象としてきた社会はほとんどが人の平均寿命が伸び続けている社会であった。しかし、日本では近年寿命の伸びが頭打ちになってきつつあることが観察されており、近い将来、毎年の人口に占める亡くなる人の割合は高くなると予想される。この状況は、医療支出の増大に伴う財政問題をさらに深刻化させることになる。我々はこの問題意識に基づき、寿命が伸び悩む中、亡くなる人の人口に占める割合が高まることによって総医療支出はどのようになるのか将来の総医療支出を計測することを目的とおき分析をおこなった。 分析では2011年と2014年の都道府県別国民医療費を各時点の生存者と死亡者とで10歳刻みの年齢階層別に分解し、一人当たり医療費に対する年齢階層別・生者・死者別の影響度を計算した。次に、推計したパラメーターを用いて2060年までの国民医療費の総額を推計した。 分析の結果、一人当たり医療費では2015年ではおよそ33万円程度かかっているが、2060年には42万円ほどまでに増加することがわかった。そのうち亡くなる直前にかかる医療費は、一人当たり医療費の数%であることが明らかとなった。また、将来の総医療費を計算したところ、2026年に総医療支出がピークを迎えた後は緩やかに減少していくことが確認された。総医療支出の増大に貢献するのは生きている人の医療費であり、死亡する人達にかかる医療費は総医療支出に対してさほど影響を与えないことがわかった。たとえ死亡率が2%近くになる社会になったとしても、総医療費からみた死ぬ直前に投下される医療支出はさほど大きくない。 この結果は、高齢化社会がすすみたくさんの高齢者がいっせいに亡くなる時代がきたときの終末期医療をどうするか、という問題に対して一つの解を与えるものといえる。
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