2017 Fiscal Year Annual Research Report
Finance and firm dynamics
Project/Area Number |
26380394
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
式見 雅代 (富山雅代) 長崎大学, 経済学部, 教授 (30313456)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 企業ダイナミクス / 企業金融 / 資金制約 / 企業・銀行関係 / 銀行の市場支配力 / 資金の再配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、企業をとりまく金融環境が開業、成長、退出等の企業ダイナミクスに与える影響について、実証的に解明することにある。平成29年度には、銀行の市場支配力と銀行の資金再配分機能が、開廃業に与える影響に関する研究成果を学会報告し、論文投稿した。分析から、銀行の市場支配力が高いほど、無形資産投資の多い産業で開廃業率が高くなる一方、銀行の市場支配力の効果は、ゾンビ企業が多い産業では弱くなるという結果を得た。他方、金融危機時に政府からの資金援助を受けた金融機関が主要な貸し手となる地域では、無形資産の多い産業で、開業率が高まるという結果を得た。これらの結果は、貸出市場の競争条件のみならず、銀行の資金再配分機能の健全性や流動性供給力が企業ダイナミクスに影響を与えることを示唆する。 さらに、成長期の企業の現金保有行動に関する研究成果を学会報告し、国際学術雑誌に論文投稿した。企業の現金保有動機は、取引動機と予備的動機に大別される。成長機会があるが、資金制約に陥りやすい企業ほど、将来の投資機会に備えて現金を保有すると考えられる。銀行との緊密な関係は、情報の非対称度が高く、資本市場からの資金調達が困難な企業の資金制約を緩和するため、企業の現金保有比率は低下すると予想される。他方、銀行関係が集中すると、ホールドアップ問題に遭遇し、過剰な現金保有が起こりうる。分析から、成長期の企業の現金保有比率は、銀行関係が集中するほど、低下するものの、規模の小さい企業では逆の結果を得た。また、社債市場へのアクセスがある企業では、こうした銀行取引関係の効果は、見られなかった。これらの結果は、銀行関係の内生性を考慮しても変わらなかった。企業の現金保有行動は、金融危機時と平常時は変わらなかったが、東北大震災時には異なり、多くの金融機関と取引関係がある企業では資金制約が緩和されていることが判明した。
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Remarks |
Sungkyunkwan University(韓国)の研究者と企業グループ内の資金移動に関する国際共同研究を進めており、29年度は4回の研究打ち合わせを行った。
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Research Products
(3 results)