2014 Fiscal Year Research-status Report
非ベイズ時変計量経済モデルを用いた外国為替市場の時変構造に関する研究
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26380397
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 幹夫 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (70184695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 顕彦 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (80610112)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 為替市場 / 市場効率性 / 先物プレミアムパズル / ベクトル誤差修正モデル / 時変計量経済モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,研究代表者である伊藤は,本研究課題の分析を進めていくための時変計量経済モデルの開発を中心に行った.具体的には,時系列解析における既存のベクトル誤差修正モデルを拡張し,頻度論統計学に基づいた時変計量経済モデルを開発すると同時にそれらモデルの理論的特性について検証を行った.Ito et al.(2014, Applied Economics 46(23), pp.2744-2754)と同様に頻度論統計学に基づいた時変計量経済モデルを構築したことで,(ベイズ統計学に基づいた既存の手法を用いた場合とは大きく異なり)単に恣意的なパラメータの事前分布に依存することなく分析が可能となることが示された.次に,研究分担者である野田は,Thomson Reuters Datastreamから抽出した世界各国の外国為替市場における為替レートなどの月次データを収集して,拡張した非ベイズ時変計量経済モデルに適用するために整形し,データベース化を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
頻度論統計学に基づく新しい時変計量経済モデルの開発を担当する伊藤は,第一に,これまでに行った共同研究の成果を踏まえて時変ベクトル誤差修正モデルの理論的特性について検証した.具体的には,上記の時変計量経済モデルにおけるパラメータの識別可能性について数理的に厳密な証明を行うと同時に,それらのモデルを実施するためのコンピューターアルゴリズムの構築を行った.以上のように,本研究課題における分析手法の構築を完了できた.また,実証分析を担当する野田は,Thomson Reuters Datastreamから抽出した世界各国の外国為替市場における為替レートなどの月次データを収集して,データベース化することによって,本研究課題における分析用データの構築を完了した.以上2点の基礎的作業を完了できた点からも,現在までの達成度は概ね良好であると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,伊藤と野田は,前項「現在までの達成度」にも示したように,昨年度に行った本研究課題における分析手法および分析用データセットの構築を踏まえ,より詳細な計量分析を行う.具体的には,直物と先物の為替レート間の長期的均衡の動態を通貨ごとに明らかにすることで,先物プレミアムパズル(FPP)が生じている時期についての推定を行い,世界各国の外国為替市場におけるFamaの意味での効率性が時間を通じてどのように変動するかを検証する. FPPが生じていた時期と外国為替市場が非効率であった時期を対比することを通じて一致するか否かを通貨ごとに検討することを通じて,市場効率性の変動とFPP の関連が強く疑われる時期ごとの経済状況を考慮しながら,FPPが生ずる原因を検証していく.
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Causes of Carryover |
伊藤の次年度使用額が生じた理由としては,本研究課題における分析手法やデータベースを構築するために予想以上の時間がかかってしまい,当初予定していた海外の学術雑誌に投稿しなかったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は本研究課題における研究期間の2年目であるため,論文を海外の学術雑誌に投稿するための経費として改めて配分する.
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