2015 Fiscal Year Research-status Report
非ベイズ時変計量経済モデルを用いた外国為替市場の時変構造に関する研究
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26380397
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 幹夫 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (70184695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 顕彦 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80610112)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外国為替市場 / 市場効率性 / 先物プレミアムパズル / ベクトル誤差修正モデル / 時変計量経済モデル / 市場統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,研究代表者である伊藤は,前年度に続き,本研究課題の分析を進めていくための時変計量経済モデルの開発を行った.具体的には,(1)伝統的な頻度論統計学に基づいてベクトル誤差修正モデルの係数パラメータが時間を通じて変化する場合の簡便な推定方法を確立した,(2)ベクトル誤差修正モデルのパラメータのうち,長期均衡への収束に関わるパラメータが時間的変化を捉えるための検定統計量をブートストラップ法を使って定式化した.具体的には,推定方法が回帰分析手法に依っていることを活かして,残差ブートストラップ法を用いた,(3)(1)および(2)における時変推定を実施する際にコアとなるコンピュータプログラムを統計言語Rで書き下した.次に,研究分担者である野田は,前年度にThomson Reuters Datastreamから抽出した先進各国(日本,イギリス,カナダ,EU,スイス)の外国為替市場における現物・先物市場の価格データを用いて試験的な計量分析を実施した.具体的には研究代表者が作成したコンピュータプログラムを実証分析用に書き直すと同時に,分析上の致命的なバグが生じないかどうかを確認する作業を行った.検証作業の結果,実証分析に用いるコンピュータプログラムには特別な問題がないことが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時変計量経済モデルの開発を担当する伊藤は,前項「研究実績の概要」に示した3点を中心に検証を進めた.具体的には,Ito, Noda and Wada (2014, Applied Economics) で提案された非ベイズ時変ベクトル自己回帰モデルのケースと同様に,非ベイズ時変ベクトル誤差修正モデルにおけるパラメータのうち,長期均衡への収束に関わるパラメータの時間的変化を捉えるための検定統計量をブートストラップ法を使って定式した.また,そうした検定を実施するためのコンピュータプログラムを統計言語Rで書き下した.以上のように本研究課題における検証を行う際に必要な検定統計量の開発を完了できた.次に,実証分析を担当する野田は,Thomson Reuters Datastreamから抽出した先進各国(日本,イギリス,カナダ,EU,スイス)の外国為替市場における現物・先物市場の価格データを用いて試験的な計量分析を実施した.研究代表者が作成したコンピュータプログラムを実証分析用に書き直すと同時に,分析上の致命的なバグが生じないかどうかを確認する作業を行うことで本研究課題において必要とされる試験的分析を完了した.以上2点の中間的作業を完了できた点からも,現在までの達成度は概ね良好であると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,研究代表者である伊藤は,前項「現在までの達成度」にも示したように,昨年度に行った本研究課題における統計的検定手法の構築を踏まえ,研究分担者である野田および研究協力者である和田と共に先進各国(日本,イギリス,カナダ,EU,スイス)の外国為替市場における現物・先物市場の価格データを用いてより詳細な計量分析を行う.長期均衡への収束に関わるパラメータの時間的変化について推定・検定を行うことで,直物と先物の為替レート間の長期的均衡の構造を明確にしたうえで,市場が当該の長期均衡に近づく様子を動態的に扱うことが可能となる.具体的には,非ベイズ時変ベクトル誤差修正モデルにもとづいて推定した外国為替市場の効率性と市場統合の時間的変動が一致するかどうかを検証することで,FPPが生じる原因の解明が進むと考えている.なお,こうした解釈の結果を論文としてまとめ,国内外の学会で報告したうえで,適切な海外の学術専門雑誌に投稿する予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,当初予定していた国際学会(Econometric Society)や研究会(Midwest Econometrics Group)における研究動向調査のための出張を行わなかったことと,論文の完成の遅れによって国際学術雑誌への論文投稿に係る諸経費(論文投稿料および英文校閲料)を執行しなかったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度であるため,本年度に生じた未使用額のうち研究遂行に必要な物品購入に約5万円,国際的な学会や研究会において研究報告を行うための旅費として約20万円(北米で開催される国際学会への参加),国際学術雑誌への論文投稿に係る諸経費(論文投稿料および英文校閲料)に約20万円を計上する.
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Research Products
(7 results)