2016 Fiscal Year Research-status Report
金融エリートと日本の銀行業の近代化―大蔵省・日本銀行・財閥系銀行―
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26380422
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
邉 英治 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50432068)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金融史 / 日本経済史 / 天下り / 金融エリート / 日本銀行 / 大蔵省 / 金融自由化 / 国立銀行 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究年度第3年目にあたる今年度は、これまでに収集したデータを整理・精査した上で、必要となる研究作業を適宜進めた。 大蔵省及び日本銀行の金融エリートと日本の銀行業の近代化に関わっては、安定成長期における金融エリートの天下りの方向性、すなわち相互銀行の地方銀行化などの各種金融機関の同質化と競争激化との関連での民間金融機関への実質的トップとしての再就職と関連する1970年代以降の金融自由化について、日本銀行アーカイブで一次史料を収集するとともに、二次資料を東京大学経済学部図書館及び国立国会図書館等で調査・収集した。 史資料分析の結果、戦後初のマイナス成長を受けた国債の大量発行開始という財政上の理由や証券化の開始という金融革新それに伴う金利自由化という時代背景、さらには郵便貯金(政府)の躍進による大蔵省・日本銀行の相対的地位の脅かしといった国内的な事情が、先行的に金融自由化を導いており、そこに1980年代以降のアメリカを中心とする外圧が加わったことが明らかとなった。このような時代の流れを銀行監督関係の金融エリートたちが主体的にリードして、天下りの必要性を増大させた証拠は見つからなかった。安定成長期における天下りの主眼は、あくまで同族経営や縁故貸出といった経営問題を是正することにあったといえよう。なお、研究成果の一部について、イタリア・フィレンツェのEuropean University Instituteで開催された国際会議において、招待報告を行った。 さらに、東海銀行の前身である名古屋第十一国立銀行の研究と関連して、初代頭取・役員や初代支配人等と東海地方の銀行業の近代化との関連についても研究を行った。その成果の一部は、地方銀行会館の月例研究会において報告し、学術論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大蔵省及び日本銀行の金融エリートについては、これまでの国際会議発表等でとりわけ関心を惹いた安定成長期における相互銀行等の各種金融機関への天下りと関わって、同時代に進展した金融自由化と関連付けることで、新たな知見を得るとともに、天下り=即悪ではないというこれまでの結論を補強することもできた。さらに、地方の金融エリートにまで分析の射程を広げることもできた。これらの研究成果の一部については、国際会議で招待報告の機会を得たり、学術論文として公表することができた。 一方、シャンドとパース銀行の一次史料の調査・収集及び金融エリートの国際比較分析については、秋以降本格的に研究を進める予定であったが、11月以降の国際情勢の不安定化で海外出張の予定が組みにくくなった上、12月以降は研究代表者が所属する経済学部の改組と教務厚生委員を務めていた時期が重なってしまうなど校務が想定外に多忙となったため、残念ながら次年度の課題として残された。 以上の研究の進捗状況をトータルで考えた結果、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前年度に行うことのできなかった日本の銀行業の近代化に大きな影響を与えた金融エリートのシャンドの経営手腕について、イギリス・エジンバラに出張し、Royal Bank of Scotland Archivesにおいてパース銀行の一次史料を調査・収集・分析し、その内容を明らかにする。 金融エリートの国際比較分析については、海外出張の際に研究打合せを行って、情報収集を進め、国際共同論文という形で研究成果の公表へと発展させていく予定である。 財閥系銀行の金融エリートについては、三井銀行を中心的対象として、史資料収集とデータ分析を引き続き進めていきたい。
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Causes of Carryover |
先にも述べたように、研究代表者が所属する経済学部改組と教務厚生委員の業務(学部教育科目履修案内の全面改訂作業等)が重なってしまったため、残念ながら2016年12月~2017年3月に十分な研究時間を確保できなかった。また、2016年秋以降における国際情勢の不安定化もあった。 財閥系銀行の金融エリートに関わる史資料収集のための国内出張や、シャンドとパース銀行に関わる一次史料収集及び金融エリートの国際比較に向けた研究打合せのための海外出張の予定を組むことができず、結果的に、国内・海外旅費や国内・国際ジャーナルへの学術論文投稿関連費用等の支出が次年度送りとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に2017年8月に2週間の海外出張の予定を確定させており、シャンドとパース銀行に関連する一次史料収集を行うとともに、海外出張の際に金融エリートの国際比較に関わる研究打合せを行うことで、研究を進展させることができる。それに伴って、海外出張費(旅費)や国際ジャーナルへの論文投稿と関連する諸費用(投稿料や英文校閲等)の支出が生じる予定である。 財閥系銀行の金融エリートに関わる史資料収集についても、国立国会図書館等で適宜進めることができるよう校務量を調整しており(今年度は入試広報委員で、主に大学院担当予定)、資料代・国内出張費や複写費等の支出が生じる予定である。
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Research Products
(3 results)