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2017 Fiscal Year Research-status Report

第一次世界大戦下の英国のロジスティクス:GKN社と軍需省を中心に

Research Project

Project/Area Number 26380446
Research InstitutionDoshisha University

Principal Investigator

菅 一城  同志社大学, 経済学部, 教授 (70276400)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2019-03-31
Keywordsイギリス / ウェールズ / 19世紀後半 / 郊外 / 住宅 / 投資
Outline of Annual Research Achievements

過年度の研究実績は、菅一城「19世紀後半の英国の郊外開発における家主―カーディフの2つの郊外住宅地の事例から―」『経済学論叢』(同志社大学)第69巻1号、97頁~135頁としてまとめた。この研究成果は、すでに報告しているように、当初予定していたGKN社の取引に関わる書簡の一部が形式的な送り状だったことが明らかになったので、同じ公文書館で利用できるプリマス伯爵家の所領経営文書を用いて、鉄鋼の積出港として急成長したカーディフの郊外化の過程を検証したものである。
先行研究(Daunton, 1972)は地域商業の拠点であったカーディフ中心市街の商工業者などが中心となって郊外に借地し、工業労働者向けの貸家の建設に投資して、貸家経営者として郊外開発を担ったことを示した。これは、おもに借地の地主であったプリマス伯爵家の書簡史料に依拠した論考であったが、上記の研究成果は、①同伯爵家の帳簿類を網羅的に集計し、②先行研究が扱った郊外住宅地グレンジ・タウンに加えてもう1つの郊外住宅地ペンアルスも対象とした点で、先行研究と異なる試みである。
その結果として、上記の研究成果は、先行研究が一断面だけを切り取って示した郊外開発を、重層的な「郊外化」の過程として示した。つまり、①中心部の商工業者の投資対象であったグレンジはしだいに商工業地域として成熟し、地域内部から新しい借地人=投資家=家主を生み出した。②港湾地区ペンアルスは当初からイギリス全域から広く借地人を集め、労働者住宅街とともに高級住宅地としても発展した。
なお、上記の研究成果にあわせて、研究対象期間を第一次世界大戦直前の時期まで延長した研究成果を菅一城「世紀転換期英国の郊外開発における借地人―2つの郊外化の事例―」『経済学論叢』(同志社大学)として近く発表する。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題は、当初、グラモーガン公文書館に所蔵されている製鉄会社GKN社の書簡綴りを用いて、GKNを中心とした企業間関係を描き、戦略物資である鉄鋼の流通管理を第一次世界大戦下の総力戦体制の流通統制のなかに位置づけることを目的とした。これは研究代表者がGKN社の書簡綴りを用いて、鉄鋼の大量生産の確立に伴って大量流通の仕組みが構築される過程を描いてきた延長上にある研究課題でもある。上記の研究目的を念頭に、軍需省とGKNの関係を考察して、前例のない試みであった軍需省による軍需物資統制の実施にあたって製鉄会社による流通管理が重要な役割を果たしたことを明らかにした。また、別の論考では、鉄鋼商ジェイムズとGKNの関係を考察して、鉄鋼商による流通管理の機能が大戦末期にしだいに軍需省による統制に置き換えられていったことも明らかにした。
当初は、製鉄会社、鉄鋼商にくわえて、商品の輸送に関わる鉄道会社や貨車の賃貸業者などを研究対象として予定し、多数の書簡の所在も確認していたが、その多くが形式的な送り状で輸送の実態が把握できないことが史料収集・分析の過程で明らかとなった。また、輸送実態を把握できる別の史料を渉猟することもできなかった。
そこで同じグラモーガン公文書館に所蔵されているプリマス伯爵家文書を利用して、GKN社の製鉄所が進出した時期でもあり、市街自体が急速に拡大した時期のカーディフの郊外開発に、直接の研究対象を変更するという判断を下した。2つの研究対象には一定の隔たりがあるものの、19世紀半ばから第一次世界大戦期にかけて南ウェールズの地域経済と外部の経済圏との関係、南ウェールズの内部の各地域の連係を明かにし、南ウェールズ経済圏が拡大する過程を複数の視点から描くという点ではおおむね順調に進展していると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

すでに示したように、本研究課題は、当初の予定と異なり、製鉄会社GKNを中心とした企業間関係を考察するとともに、GKN社をはじめとする南ウェールズ産の鉄鋼・石炭(GKN社は炭鉱なども多角経営した)の積出港として急成長したカーディフの郊外化という2つの研究対象を考察している。ただし、郊外化の研究の成果はまだ第一次世界大戦期に及んでいないので、2つの研究対象の時期が一致していないことが問題である。当面の課題は、郊外化についての対象時期を19世紀後半から20世紀初頭に広げて、2つの研究対象の時期が重複するようにすることが課題である。
そのうえで、最終年度にむけて、カーディフの事例を位置づける広い文脈、あるいはカーディフの事例と比較対照できる新たな事例を求めて、研究代表者が以前にいくつかの論考をまとめている近現代英国における郊外化の意味について議論したい。

Causes of Carryover

旅費などの実支出が当初の予定と異なったので、端数として残額が生じた。
翌年度の旅費、物品費(書籍購入)などに充当する計画である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2017

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 19世紀後半の英国の郊外開発における家主:カーディフの2つの郊外住宅地の事例から2017

    • Author(s)
      菅 一城
    • Journal Title

      『経済学論叢』(同志社大学)

      Volume: 69 Pages: 97-135

URL: 

Published: 2018-12-17  

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