2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study on Social Capital of New Overseas Chinese
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26380490
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
辻田 素子 龍谷大学, 経済学部, 教授 (40350920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
姜 紅祥 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80626713)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネットワーク / コミュニティー / 社会関係資本 / 華人華僑 / 中小企業 / 海外進出 / 創業 / 移民企業家 |
Outline of Annual Research Achievements |
2004年度にスタートした本研究の目的は、平均的な能力や意欲を持った個人がその潜在可能性を開花させ繁栄できる社会の特性を提示することである。具体的には、改革開放後の新華僑(中国系新移民)に着目し、ほぼ同時期に欧州に進出しながら、繁栄の程度が出身地によって大きく異なる理由を、彼らの行動様式やネットワーク戦略、埋め込まれているコミュニティーのありようなどの観点から、定量的かつ定性的に分析した。
3年間の研究成果は主に3つある。 (1)在欧の非温州人企業家(福建人や広東人等)へのインタビュー調査で多数のデータを収集し、長年の懸案であった、温州人企業家との比較研究を完遂できた。その成果をまとめた専門書『コミュニティー・キャピタル――中国・温州企業家ネットワークの繁栄と限界』が、商工総合研究所の平成28年度「中小企業研究奨励賞」経済部門本賞を受賞した。 (2)境界とメンバーシップが明確なコミュニティーの営為を分析する概念として、多義的なソーシャル・キャピタルでは不十分であり、より限定的な中位の概念として「コミュニティー・キャピタル」を析出し、機能するコミュニティーでは、成員への成功体験の「刷り込み」によって「同一尺度の信頼」が派生し、面識のない成員でさえ協力しあう「準紐帯」が醸成されるという論理を提唱した。 (3)同論理の妥当性を議論するため、アジアに進出した新華僑、江戸時代に日本各地に進出し大繁栄した近江商人、トヨタのサプライチェーン・グループが総力を挙げて代替生産に取り組み、わずか10日で現状回復した1997年のアイシン火災事故、2011年の東日本大震災で壊滅的被害を受けた半導体メーカー、ルネサス那珂工場の復旧に自動車メーカーや装置メーカー、ゼネコン、プラント業者らが駆け付け、わずか2カ月半で生産再開を成し遂げた事例などの分析を開始した。同研究成果は2017年度中の発表を予定している。
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