2014 Fiscal Year Research-status Report
国際分業行動移行期における国際経営管理の実証的研究
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26380513
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
森本 博行 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 客員教授 (90404954)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際分業 / 国際経営管理 / 海外委託生産 / OEM / ODM / オフショアリング / アウトソーシング / エコシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、製造業の国際分業行動として、新興国企業への製品の生産委託(OEM)のみならず設計委託(ODM)等、新たな国際分業体制に転換しつつある一方、国内生産回帰の兆候も見られると言われる日本の電機・電子機器産業に焦点をあてて、現状の制度化した慣行と国際経営管理の変化の両面から実証的に検討することにある。本年度は、デジタルカメラの生産について検討した。デジタルカメラを事例とした主な理由は、液晶テレビや携帯電話等において衰退する日本の電機・電子産業にあって、世界シェアの90パーセント(アメリカIDC調査)近くを維持している製品であることによる。デジタルカメラのグローバルな生産拠点は、中国では深圳、無錫、広州、ベトナム、タイのバンコクである。また国内では大分が挙げられる。デジタルカメラは、撮像素子と電子記録装置の電子系とレンズなどの光学系のデバイスからなり、中間財市場が形成されている。 本研究では、第一段階として、先行研究での議論を踏まえて、海外事業活動基本調査(経済産業省)や日系企業実態調査(JETRO)などの既存のデータベースや調査資料をもとに机上調査で問題意識を再確認するとともに、試行的に海外での実査調査を行うこととしている。国際協力銀行調査(第26回わが国企業の海外事業展開に関する調査報告)によれば、55.4パーセントの企業が海外委託生産行っており、中期的には大企業の94.5パーセントが海外委託生産のより現状の活用水準の維持ないし積極的に活用すると回答している。 実査調査では、バンコク(タイ)のJETROオフィースおよび、デジタルカメラのグローバルのデジタルカメラの生産センターであるソニー・タイを訪問し、タイにおける生産体制の現状についてのヒアリングを行った。デジタル機器において、海外委託生産の傾向は一律ではなく、競争状況によって製品間で異なっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一段階では、机上調査および試行的な海外実査調査によって、デジタル機器の海外委託生産の現状の実態がもたらす国際経営管理について検討することにあった。今後海外委託生産が、電機・電子産業ではこれまで以上に積極的に行われることが、各種調査で明らかになっている。しかし、デジタル機器であっても一様ではなく、グロ-バルな競争状況や機構部品やOSのオープン・ソーシングの程度によって異なり、製品間によって異なるという知見を得ることができた。研究は、概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、第二段階として、JETROや国際協力銀行などの既存の調査やデータベースによる定量的な調査分析を踏まえて、デジタル機器の基幹部品のサプライヤーと生産受託企業について、生産のみならず設計委託の現状について実査調査を行う計画である。 わが国企業がグローバルに競争優位にあるデジタルカメラでは、垂直統合による一貫したオフショアリング生産や国内生産が行われているが、今後、我が国企業が競争劣位にあるスマートフォンやタブレットの普及による競争関係の変化がデジタルカメラの生産にどのような影響をもたらすのか、事例として分析する。
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