2015 Fiscal Year Research-status Report
国際分業行動移行期における国際経営管理の実証的研究
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26380513
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
森本 博行 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 名誉教授 (90404954)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際分業 / 国際経営管理 / 国際分散生産体制 / 海外生産委託 / アウトソーシング / オフショアリング / リショアリング / 集中型生産体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の製造業の国際分業体制が転換しつつある中で、国際経営管理の現状の制度化した状況を踏まえて、新たな変化を把握することにある。 ASEAN10ヵ国からなるASEAN経済共同体の発足に伴って、日本企業の海外拠点戦略も変化を見せている。 経済産業省の第45回海外事業活動基調査(2014年実績)によると、ASEAN地域ではタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンで日本企業の法人数の増加が2011年以降、顕著に見られる。国際分業体制の見直しが、日本企業で行われていることを物語っている。広州市や深セン市などの珠江デルタは、複写機やプリンターの一大産業集積地であるが、生産拠点を置くデジタル複写機企業(キヤノン、富士ゼロックス、京セラ、リコー、セイコー・エプソン)の動向を調査すると、二つの傾向が見られた。第一の傾向は、既存の生産拠点を維持しながら、サプライ・チェーンの分断のリスク回避などのために、ASEANプラス1のFTPを活用して、中国から他地域(ベトナム、フィリピン)に最新の生産拠点を新設する分散型生産体制を採用するケースである。第二の傾向は、既存の中国での生産拠点を廃止し、ASEAN地域(タイ、インドネシア)に集約するケースであり、設備の老朽化や賃金の上昇ばかりでなく従業員に対する労務管理問題が理由に挙げられていた。聞き取り調査を行った深セン市に進出しているM製作所は、従業員数約4000名で電源モジュールを製造しており、総経理は従来の製造畑出身者に代わって人事労務畑出身者が務めている。従業員の就業意識が近年変化して経済的要求や就業環境の改善の要求が高まり、労務管理の困難性が進出している日本企業に共通する重要な経営課題になっているとのことであった。現地法人に対する実査調査において、日本企業の現地法人の国際経営管理の変化のひとつの表れと認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の第一段階では、机上調査および試行的な海外実査調査によって、デジタル機器、特にデジタルカメラの海外生産をタイにおけるオフショアリングおよびアウトソーシング生産とそれに対するする本社や分散化した機構部品のサプライ・チェーンの関係も含めた国際経営管理の状況を把握することにあった。グローバルな競争状況の程度によって、アウトソーシングの程度が製品間で異なる知見を得た。特に、デジタルカメラにおいては、アウトソーシングよりもオフショアリングとしての企業内国際分業体制となっていた。第二段階では、JETROや国際協力銀行などのASEAN地域の調査資料を踏まえて、AESEAN地域での日本企業の現地法人の増加について、デジタル複写機の国際分業体制を事例に検討した。国際分散生産体制を採用する企業がある一方、中国からASEAN地域に移転集中する企業について実査調査によって国際経営管理の課題について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、デジタル機器を事例にして、国際分業行動移行期における国際経営管理の変化を研究することを目的としている。第一段階ではコンスーマー用製品であるデジタルカメラの海外生産体制のオフショアリングないしアウトソーシングの国際経営管理の静態的動向について、第二段階では業務用製品であるデジタル複写機の生産拠点の新設・移転に対する国際経営管理の動態的動向についての検討を行った。最終段階では、実査調査、机上調査を積極的に行い、総括として、ASEAN経済共同体のASEANプラス・ワン(中国)の経済体制下における日本企業の可能性を検討し、学会および学会誌での発表等によって、新たな国際経営管理のあり方についての提言を行う。
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Causes of Carryover |
前年度において、旅費として3回の海外調査費80万円計上していましたが、時間的余裕がなく、一度しか海外での実査調査に行けなかったことによって予算執行額が低くなったことが主要な理由です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の最終段階であり、28年度の当初予算計画は、国内および海外調査のための旅費52万円、物品費10万の計60万円(直接経費のみ)ですが、当該年度(27年度)の予算の組入れて、旅費63万円、物品費(コンピュータ、データベース資料、書籍等)、その他費用10万円に計画内訳を修正し、執行する予定です。 ASEAN経済共同体発効後の日本企業の国際分業体制の変更とそれに伴う海外子会社経営および国際経営管理について、中国からASEAN地域に移転または分散型生産体制に移行したデジタル機器製造企業に聞き取り調査を行い、机上調査としてのデーターベース資料と融合させて、本研究の目的を達成致します。
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