2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380568
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
石井 裕明 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (50548716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴 宰佑 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (50401675)
外川 拓 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (10636848)
岩下 仁 九州大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (30608732)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | センサリー・マーケティング / 高級感 / 製品デザイン / パッケージデザイン / 身体性認知理論 / 接触欲求 / 性別 / 店舗環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多くの製品カテゴリーにおいて進んでいるコモディティ化に対応するため、製品やパッケージのデザインが生み出す高級感に注目した議論を進めている。特に、身体性認知理論に注目し、文献レビューを継続的に実施しながら、下記の点について重点的に議論を進めている。 第一に、2014年度から引き続き行っている触覚的要素に関する検討である。特に、重さや硬さが製品評価に及ぼす影響に注目しており、一定の知見も得られてきている。一部の成果については、海外学会で発表したほか、国内の学術雑誌でも報告している。 第二に、視覚的要素がもたらす影響についての検討である。特に、広告やパッケージへの対象の配置位置による消費者反応の違いに注目し、その影響を明らかにするための実験を実施している。得られた知見の一部は、既に海外学会で発表したほか、別の海外学会での報告も決まっている。 第三に、店頭における包括的な小売環境の影響についての検討である。先行研究からは、温度などの店舗環境によって消費者が対象の価値を高く感じることや、クラシック音楽などによって高級な商品が購入されやすくなる可能性が指摘されている。こうした点を加味すると、店舗環境も消費者の高級感知覚に大きな影響を及ぼしていると考えられる。そのため、本研究においては、店舗環境が消費者に及ぼす影響に関する先行研究レビューも進めている。その一部は国内の学術雑誌で報告した。 さらに、2015年度は海外研究者との連携も強めた。8月にはChinese University of Hong KongのHao Shen准教授と面談し、今後の連携の方向性について検討した。また、2016年度の冒頭には、University of OxfordのRhonda Hadi准教授をお招きし、共同研究に関する打合せを行う予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の予定が変わったものの、全体としては概ね順調に推移している。特に、消費者向けの調査については、当初計画以上の進展が得られている。当初の予定では、身体性認知理論を用いた実証研究を2015年度の後半から実施する予定であったが、計画の変更により、2014年度から継続的に取り組んでいる。一定の知見も得られてきており、一部の成果については、既に海外の学会や国内の学術雑誌でも発表した。また、2015年度後半や2016年度に取り組む予定であったデザインと高級感知覚に関する調整変数の検討についても、既に実証研究を進めており、その一部を学会で発表した。さらに、当初の予定にはなかった小売環境に関する文献レビューも進め、既に学術雑誌での発表を行っている。こうした点においては、当初の計画よりも順調に進んでいると考えられる。 その一方で、実務家を対象とした調査や検討については、当初の計画よりも遅れてしまっている。ただし、これは消費者を対象とする定量調査が安価で容易に実施できるようになったことを反映している。消費者調査と比較し、実務家を対象とした調査は多額の費用がかかる上に、データの取得も困難である。こうした点に鑑みると、消費者調査を先行して実施し、一定の成果を残したうえで、実務家向けの調査や検討を進めたほうが効果的で効率的に研究を進展させられると考えている。現在は、ブランド・マネジャーへのインタビューなどを進めることで、知見の蓄積を図っている。個別のインタビュー調査から導き出された知見を整理した上で、包括的な検討を進める予定である。 海外研究者と連携した国際的な研究進展は、予定よりも積極的に進めることができている。当初、想定していたCharles Spence 教授だけでなく、Hao Shen准教授やRhonda Hadi准教授と連携することで、より国際的な研究とすることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、2015年度に得られた研究知見の深化ならびに応用を目指していく。 第一の方向性は、視覚的要素に注目した検討の継続である。視覚的要素を考慮したデザインは様々な視点から進められてきており、非常に多くの蓄積がある。本研究では、特に身体性認知理論に基づく視点から、視覚的要素による影響を整理することで、より幅広いデザイン手法を明らかにしていく。 第二の方向性は、実務家に向けた調査の実施である。これまでの研究からは、消費者における高級感知覚に関する一定の知見を得ることができている。2016年度は実務家向けの調査を実施することにより、消費者視点だけにとどまらず、より包括的な視点から高級感をもたらすデザインを明らかにしていくことができると考えている。実務家向け調査については、消費者向け調査とは異なるノウハウが必要と考えられる。例えば、コモン・メソッド・バイアスの回避のため、独立変数と従属変数で回答者を分ける二段階サンプリングといった手法を採用する。岩下はすでに複数回実務家向け調査の経験があり(eg.岩下、石田、恩藏 2014)、岩下を中心に調査を設計することにより、より質の高い調査を実施することができると考えている。 第三の方向性は、小売環境との相互作用の検討である。当初の計画ではそれほど想定していなかったが、消費者は周囲の環境の影響により、対象への高級感知覚を変えている。本研究においても、パッケージ・デザインや製品デザインの高級感知覚に影響を及ぼす環境要因を明らかにすることで、より包括的な議論が可能になると考えられる。 第四の方向性は、国内外の学術雑誌での投稿である。本研究では、複数の学会において研究成果を発表してきており、一部の国内の学術雑誌でも知見を公表している。2016年度は、海外の論文誌を中心に、得られた研究成果の社会への発信を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
大きな理由として、2015年度中に招聘する予定であったUniversity of OxfordのRhonda Hadi准教授の都合が合わず、2016年度の招聘となったことによる。Rhonda Hadi准教授の招聘に際しては、航空券代、滞在費、会議費等の支出が見込まれると考えられる。概算ではあるが、合計30万円から40万円程度の支出となる可能性があるため、それに基づいた金額が次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該金額はRhonda Hadi准教授招聘のために使用する予定である。招聘のための航空券代(ロンドン-羽田間)を含めた交通費25万円、日本での滞在費12万円(2万円×6泊)、会議費や国内での交通費2~3万円程度を見込んでいる。
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Research Products
(21 results)