2016 Fiscal Year Research-status Report
利害調整機能と情報提供機能の数理モデル分析:連単の関係はどうあるべきか
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26380605
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
加井 久雄 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (10303108)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際会計基準 / IFRS / 業績評価 / 財官一致 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,会計の機能を会計基準の国際的統合化の文脈で数理モデルを使って検討するものである。 日本の金融庁は,2015年4月に『IFRS適用レポート』を公表した。このレポートは,IFRSを任意適用した日本企業を対象にしたアンケート調査の結果を紹介している。その中で興味深いのは,IFRSを任意適用した理由として最も多かったのは経営管理への貢献であり,財務報告の比較可能性を大きく上回った。このことはIFRSを任意適用する日本企業にも,経営管理体制はあまり変えないまま,財務報告の部分だけを変えている企業と,経営管理体制を根本的に組み直している企業があることを意味し,この点の研究が重要であるといえる。 本年度の研究は,IFRSを基礎にグループ企業全体の経営管理体制を構築することの是非を検討した。そのためには,IFRS適用を財務会計の分野だけで検討するだけでは不十分であり,IFRS適用が管理会計に与える影響も視野に入れる必要が生じる。このような問題意識から,「IFRS適用が財務会計と管理会計の関係に与える影響の検討」を行なった。管理会計には企業の自由度が高いことが確認できた。さらに,原価管理の方法として会計管理ではなく生産管理の技法への依存度が強い企業では,IFRSを基礎として経営管理体制への指向が弱い可能性があることがわかった。 IFRSを基礎としてグループ管理体制の構築する場合,単体や連結の財務諸表を使って経営者たちの業績評価を行うだろう。「企業集団内の会計基準の統一化が報酬契約に与える影響の分析」では,IFRSに基づく管理体制が望ましくなる条件を数理分析によって明らかにした。日本基準とIFRSの相対的な利益操作の難しさや親会社が在外子会社の業績を直接的に操作できる程度などによってIFRSによる統一化が望ましいかどうかが決まることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の平成28年度の研究実施計画で予定したように,数理モデルの開発をすることができた。とりわけ,会計の利害調整機能と情報提供機能の違いを明確にする有力な視点として,IFRS(国際会計基準)に基づく管理体制の構築を意図してIFRSを任意適用する企業と財務報告の比較可能性の向上を意図してIFRSを任意適用する企業の二つのタイプがあることに注目することが有効であることを発見し,この点に着目したモデルの開発をした。まだ暫定的ではあるが,このモデルに基づく研究内容をまとめ,学会発表や論文投稿を行なった。また,平成29年度にも学会発表などをしていく予定である。 利害調整のうち,株主と経営者の間の利害調整については分析できているが,債権者と株主の間の利害調整を明示的に分析に取り込めていない。この点は,複数プリンシパルがいる場合の契約理論のモデルを応用できないか検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり,これまでの研究成果の発表に対する他の研究者などからのコメントを踏まえて,研究内容のさらなる改善を行うと共に,研究会や学会で成果を発表する。また,研究成果をまとめて論文を作成し,学術誌への掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
出席を予定していた研究会の日程が学内業務と重なってしまったため,予定していたよりも旅費が少なく済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の秋に予定されている国際学会出張の旅費に使用したい。
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Research Products
(4 results)