2014 Fiscal Year Research-status Report
利益の品質が配当政策のコロボレーション効果に与える影響に関する実証研究
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26380613
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
石川 博行 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (60326246)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 利益の品質 / 配当政策 / コロボレーション効果 / 個人株主 / 経営規律 / インプライド期待リターン / インプライド期待成長率 / 同時推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、利益の品質が配当政策のコロボレーション効果に与える影響を実証的に解明することを主たる研究課題としている。その一環として、初年度は主として、以下の2つの研究を行った。 第1に、将来業績(将来の収益性、成長性、配当政策)に与える影響の観点から、日本企業の個人株主開拓の経済的意義を実証分析した。その結果、次の事実を発見した。①株主優待等の個人株主開拓策は、業績、配当、規模要因等を所与としてもなお、個人の株主数や持株比率を上昇させる。しかし、②個人株主が増加した企業は、利益率変化の次期反転、配当変化の収益性シグナリング、投資の効果などを所与としてもなお、次期の収益性、成長性、配当率がいずれも有意に低下する。この結果は、経営参加のインセンティブが小さい小口の個人株主が増加することで、経営規律が低下している可能性を示唆している。この証拠は、日本企業が積極的に行っている個人株主開拓に警鐘をならすという意義がある。 第2に、近年注目されているインプライド期待リターンとインプライド期待成長率を同時に逆算推定する方法を適用することで、配当の成熟仮説を実証分析した。その結果、次期増配予想を行った企業の期待成長率と期待リターンは、いずれも有意に追加的に上昇していることが明らかとなった。この結果は、日本企業の次期増配シグナルが、平均的には、企業成熟よりも企業成長を示唆するものであることを示している。この証拠は、[増配=企業成熟、システマティック・リスクの低下]という米国の証拠が、必ずしも、日本企業にあてはまらないことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの論文を公刊するとともに、日本会計研究学会第73回全国大会(2014年9月5日、6日)において、「資本と利益の実証研究の方向性」というテーマで統一論題報告を行った。2年目以降の本格的な分析を行うためのリサーチ・デザインの構築に際して、初年度の研究成果が与える貢献は大きい。以上から、研究活動はおおむね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
学会や研究会で得たコメントに基づいて、すでに初年度の実証分析の精緻化を図っている。また初年度の研究成果を踏まえた上で、本研究課題のリサーチ・デザインを構築する。その後、データベースが完成次第、本研究課題の実証分析に取りかかる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、海外での研究報告や英文ジャーナルへの投稿を次年度に積極的に行うためである。次年度は、最新データを用いて初年度のパイロット・テストをさらに精緻化させる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用する予定の研究費は、初年度の実証分析を精緻化させた上で、英文ジャーナルへの投稿(翻訳費用、投稿費用)や海外での研究報告(海外旅費)への支出を予定している。なお、最新のデータに基づく証拠を提供することが実証研究においてとくに重要であることに鑑みて、初年度に購入したデータベースを更新するとともに、東京証券取引所等に出張して最新データを収集する。
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