2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380629
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西谷 順平 立命館大学, 経営学部, 准教授 (40363717)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 保守主義 / 情報システム / 分析的会計研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、財務会計基準設定における、条件付き保守主義と無条件保守主義の適用条件を多期間モデルを使った分析的研究によって明らかにすることであった。そして、その目的に向かう初年度となる平成26年度においては、これまで申請者が行なってきた保守主義の分析的研究を手がかりに、条件付き保守主義と無条件保守主義をモデル化し、両者の選択問題を定式化することであった。また、そこでのポイントは、条件付き保守主義と無条件保守主義をモデル化するために両者のトレードオフ関係を規定するような特性の違いを発見することであった。 上記を受けて行われた平成26年度の研究結果の詳細は、同年に著され提出公表された8章立ての博士論文『会計保守主義の研究ー会計史の経済分析とGAAPの再発見』に譲ることにして、大まかには以下のとおりである。 まず、平成26年度に行なった作業は、そもそも条件付き保守主義と無条件保守主義が会計実務上あるいは会計ルールとして、どのような歴史的背景のもとで生まれたのかについて改めて分析することであった。そこではとくに、会計実務の起源にまで遡った上で、とくに会計実務をめぐる経済的な背景を構造的に分析することに焦点を当てて、通史のなかで保守主義が生まれたロジックを析出することを試みた。その結果、原初的な会計情報システムとして規定できる「フィレンツェの保守主義」が、産業革命を契機として解体され、保守主義という概念が言語化されるとともに、無条件保守主義と条件付き保守主義に分化したことが明らかとなった。次に、そうした歴史的経緯も踏まえた上で、保守主義をあらためて下方バイアスとして組み込んだ会計情報システムを設計した結果、保守主義を4つのタイプに分類できることを発見し、かつ、それらが共存する一つの会計情報システムを策定した上で、相互関係を分析し一定の結果を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、これまで申請者が行なってきた保守主義の分析的研究を手がかりに、条件付き保守主義と無条件保守主義をモデル化し、両者の選択問題を定式化することであった。また、そこでのポイントは、条件付き保守主義と無条件保守主義をモデル化するために両者のトレードオフ関係を規定するような特性の違いを発見することであった。それに対して、上記「研究実績の概要」でも記述した通り、会計通史をあらためて経済学的に構造分析し一定の結論を得た上で、それをもとに保守主義を会計情報システムにおいて分析・策定した結果、保守主義を条件付き保守主義、無条件保守主義といった2種類ではなく、さらに細かい4種類に分類できることを明らかにした上で、それらを一つの会計情報システムに組み込んだ上で相互関係を分析した。その結果、それらの間にトレードオフ関係だけでなく補完関係をも発見することができた。この研究遂行結果は、本研究が、上記、当初の研究計画通りにおおむね順調に進展していることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、本研究の申請にあたって提出した当初の研究計画通りに、平成26年度に発見した4種類の保守主義のトレードオフ関係や補完関係を表現でき、かつ、分析に耐えるだけのシンプルな会計情報システムをあらためて策定した上で、契約理論あるいはゲーム理論のフレームワークを使って問題を定式化することが課題となる。そこでは、社会的便益の最大化を目的とする会計系基準設定機関の意思決定が、企業が自らの便益を最大化するための会計情報システム最適設計問題に介入できるようなモデルをいかにうまく作るかがポイントとなる。同様の問題を扱ったGigler et al.(2009)を参考にしながら挑戦していくことにしたい。 ただし、一点、研究遂行に当って心配される点が、残りの研究計画期間である平成27、28年度に浮上してきたことを述べておきたい。それは、申請者が所属研究機関=大学において行政的な役職を振り当てられた点である。具体的には、拠点キャンパスの国際教育センター長として、派遣・受入留学生の選考や管理、多くの面接を通した奨学金の割り振りといった実務だけでなく、今後の大学の国際展開に当たって、課題を析出するとともに、それらを解決していくことが求められているようである。そのため、本研究申請時の当初に想定していたエフォートが達成できない可能性が高まっている。とくに、研究成果を国際学会において発表し評価を受けるという、本研究において重要なプロセスが、スケジュール的に実行困難になってくる可能性が高い。よって、場合によっては、エフォートを下げた上で研究期間の延長を申し出を行い、国際学会のスケジュールを睨みながら、研究計画を練り直すことがあるかもしれない。今までの研究進捗がスムースなだけに大変惜しいことではあるが、この点、あらかじめ配慮頂ければ幸いである。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会の渡航が、学内で割り振られた2回分の留学引率(ニュージーランド、アメリカ)と日程が重なるなどしたため、断念したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会と学内で割り振られる行政事務との兼ね合いを見極めつつも、積極的に海外で発表したり、研究発表を聞く機会を捉える予定を組み込んでいくことで差額を効果的に使用していきたい。
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