2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380629
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西谷 順平 立命館大学, 経営学部, 教授 (40363717)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 保守主義 / 会計基礎概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、これまでの2回の科研費に支援されて昨年に書き下ろした博士論文をさらに煮詰め、より多くの重要な示唆を含む論文としてバージョンアップさせることに費やした。そして、その成果を単著書籍、西谷順平『保守主義のジレンマー会計基礎概念の内部化』中央経済社、2016年3月31日、として出版することができた。 また、その書籍中で、申請時に提出していた研究計画の平成26年度・27年度分について、前者は計画通り、後者については計画半分程度に達成した内容を盛り込むこともできた。つまり、平成26年度分については、条件付き保守主義と無条件保守主義を1つのモデルの中で表現できるような情報システムモデルを策定し、その分析によってそれら二つの保守主義のトレードオフ関係や親和性といった特性を明らかにした。そして、平成27年度分については、平成26年度に策定した情報システムを用いて、とくに会計基準設定機関の意思決定をモデル化し分析した。ただし、プレイヤーは未だ二人であり、会計基準設定機関・プリンシパル・エージェントという3者のプレイヤーの利害調整を同時に扱えるようなモデルは未完成という点で当初の計画目標にはまだ達成できていないと評価できる。 一方で、今年度に書籍原稿を煮詰めるプロセスにおいて、昨年度にいったん達成していた保守主義をめぐる会計史研究において、新しい発見があった。つまり、名目資本維持ないし取得原価をベースにした現在のような会計実務が、時価評価に保守主義が影響して生まれた時価ベースの低価法から生まれたことの発見である。これは、これまでの会計史研究において、時価主義と取得原価主義の間に断裂ないしパラダイム変換があったという支配的な見方を覆すものになりうると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績概要でも述べた通り、会計基準設定機関・プリンシパル・エージェントの3プレイヤーの利害調整を同時に分析できるモデルの構築にはまだ至っていないという点で、平成27年度の進捗度は半分ほどである。また、そのために、日本語書籍としては一定の成果を挙げたものの、国際学会レベルで勝負できる英語論文という形までにはまだ至っていない。その理由としては、予想以上に複雑な数式を解かなければいけないことがわかり手間取っていることもあるが、所属学部のキャンパス再配置および新しいキャンパスにおいて全学役職(国際教育センター長)に任命され行政雑務が増加し、エフォート率が落ちたことが主に挙げられる。全学役職の期間が数年に渡ると聞いていることから、基金化を利用し、最終年度である2016年度に研究期間の延長を申し出る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに、複数タイプの保守主義を内蔵する統一的な会計情報システムは完成していることから、今後はそのシステムを用いていろいろなモデルを試してみることに注力していくことになる。ただし、上記でも述べたように、平成27年度の進捗が遅れていることから、基金化による研究期間の延長申請が認められることを前提として、平成28年度はその遅れを取り戻すために用いたいと思っている。よって、当初計画していた、当該モデルをさらに多期間化するという工程は平成29年度に繰り延べることになる。また、平成28年度の研究成果を年末までには英語論文として完成させ、複数の国際学会に応募し、平成29年に国際学会を回って多くのコメントを集めたいと思っている。
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Causes of Carryover |
科研費の大部分は、国際学会参加のための旅費名目で申請している。しかしながら、1、キャンパス再配置および全学役職任命などにより、進捗が計画より遅れたことで英文論文を学会査読に応募できなかったこと、および、2、書籍発刊のための詰めの作業が思った以上に大変だったこと、そして、3、テロ多発により海外の学会に参加することが危ぶまれたことにより、旅費を計画通り利用することができなかったために、次年度使用額が生じてしまっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画には遅れが生じているが、いったん書籍も発刊し、全学役職も二年目を迎えて時間のやりくりも少し緩和しているので、今年度は昨年度に参加チャンスを逃した分を取り戻すべく国際学会に積極的に参加、発表するだけでなく、書籍の披露およびコメントの収拾のために国内の学会・研究会にも積極的に参加していくことにしたい。
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