2015 Fiscal Year Research-status Report
会計変化の本質の研究:テキストマイニングと統計的分析を活用した理論生成過程の考察
Project/Area Number |
26380632
|
Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
澤登 千恵 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (30352090)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | Accounting Changes / Fundraising / Capital Expenditure / Audit |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,会計の理論化に影響を与える(与えてきた)要因を再検討することである。現代的な財務会計および管理会計の源流である19世紀イギリス鉄道会計に注目し,歴史的実証研究を行うとともに,科学的でないと批判される歴史的実証研究に,テキスト(データ)マイニングを活用し網羅的・客観的な分析をあわせて行うことで,その科学性を高めることも目的としている。 平成26年度までは,①19世紀イギリス鉄道会計の問題として,減価償却,費用削減,監査,在庫に係る問題があったこと,②そのような会計問題を解決するために会計変化が行われてきたこと,③会計を変化させた要因として,これまで主張されてきた経営成績の悪化や配当政策に加えて,外部から資金調達ができなくなること(資金調達不確実性)の影響があったことを検討した。 平成27年度では,④上記の会計変化は資本的支出と収益的支出の区別の理論確立へとつながったことを検討した。同時に,資金調達不確実性の影響を客観的に実証することを目的として,⑤当時を代表する鉄道会社London and Birmingham鉄道会社を対象に,上記の会計問題を示唆するターム,depreciation,reduction,audit(inspection),storesのそれぞれの(重み付けされた)頻度の変化を被説明変数とし,資金調達不確実性を示唆するタームclosedの(重み付けされた)頻度の変化を説明変数とし,それぞれの相関を分析し,北海道大学で開催された春日部光紀准教授主催の研究会で報告した。⑥closed以外の要因を排除するために,回帰分析を行った(進捗状況参照)。なお資金調達不確実性の影響は,鉄道会社に先行して発展していたガス会社でも確認でき,財務報告実務と監査実務の変化と資金調達不確実性の関係について研究を開始した(5月11日,EAA2016で報告)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定外の統計的分析を行うことにしたためである。前述したように,上記の⑤までの成果を研究会で発表したところ,当該研究会にゲーム理論,経済理論を専門とする先生も参加されており,彼らから会計変化の要因を客観的に特定するためには,つまりclosedの変化のreductionの変化に対する影響を強く主張するためには,その他の要因を否定する結果を明示することが必要だと批判された。分析手法を確立することが最重要事項であり,更なる統計的分析を先に行うことを決定し,実施した。①reductionの変化とその他全ての出現タームの変化の相関を分析し,その中からclosedの変化との相関係数よりも高い66タームを抽出した。②次に,抽出されたタームを検討し,会計変化の要因を示唆しないと考えられるターム,具体的には財務諸表上の科目に係るターム等を除外し,deficiency,depression,voted,closedを抽出した。③これら4つのタームをreductionの変化に影響を与えた可能性のある要因とし,説明変数reductionを最も説明できる組み合わせを分析した。結果は次のとおりである。(a)closedの自由度調整済決定係数を確認し(0.53),closedのみでもreductionの変化をある程度,説明できることを確認した。(b)組み合わせのうち,reductionを被説明変数,closedとdepressionを説明変数とした場合,自由度調整済決定係数(0.61)が最も高く,reductionの変化を最も説明できることを確認した。偏回帰係数については,closedが0.73,depressionが0.43で,closedの方が高く,closedが,depressionよりも,reductionに強い影響を与えていることを確認した。ただし,母数が少なく,5%水準では有意でない。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては,①Institute of Historical Researchの紀要に投稿したが修正を求められている原稿を上記の結果を反映させるように修正する。②次に,鉄道会社数を増加させた分析結果を用いて,同様の分析手法で検討を行う。(a)London and Birmingham鉄道会社とLondon and North Western鉄道会社,(b)London Brighton, and South Coast鉄道会社,(c)Great Western鉄道会社,③ (a)(b)(c)の比較検討を行い,この分析結果で制度化の要因を検討する。④成果について,12月,(予定していたAccounting History Review Conferenceの開催予定が未定であるため)European Accounting Association Congressにエントリーする。⑤一方で,実務が制度化を経て理論に与えた影響を次の文献を中心に検討する。Dicsee(1902),Auditing: a practical manual for auditors, 5th ed., London; (1903) Depreciation, reserves, and reserve funds, London; (1907) Advanced accounting , London, reprinted. 成果は,二年度の日本会計研究学会で報告する。⑥一方で,ガス会社であるCharterd Gas Light and Coke CompanyやIndpendent Gas Light and Coke Companyでも会計変化に資金調達不確実性の影響を確認できたため,さらに会社数を増加させて研究を進める。
|
Causes of Carryover |
2015年7月,北海道の研究会で報告したところ,出席者より,これまでの分析結果(テキストマイニングと相関分析)を更に統計的に分析する必要性があると意見を受けた。その後,テキストマイニングの結果を更に統計的に分析する方法やその有効性について,専門家の意見を受け,原稿を修正することにした。それ故に,平成27年度に成果を学会で報告する予定であったが,当該分析を終了してから行うことにしたため,次年度への繰越が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
原稿は,昨年度一度提出して修正を求められていたInstitute of Historical Researchの紀要に提出する。英文チェックのための費用が必要となる(¥100,000)。比較分析を含めた原稿は今年の12月,European Accounting Associasiation2017 Congressにエントリーする予定で,英文チェック(¥100,000)と渡航と学会参加のための費用(¥300,000)が必要になる。
|
Research Products
(1 results)