2015 Fiscal Year Research-status Report
「表現の自由」とヘイト・スピーチ法規制をめぐる社会学的研究
Project/Area Number |
26380696
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
鄭 暎惠 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (10207326)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郭 基煥 東北学院大学, 経済学部, 教授 (10551781)
李 善姫 東北大学, 東北アジア研究センター, 教育研究支援者 (30546627)
師岡 康子 大阪経済法科大学, アジア太平洋研究センター, 研究員 (80648717)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ヘイト・スピーチ / 表現の自由 / 外国人 / 多文化主義 / 法制化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度に選挙人名簿でランダムサンプリングを行い、2015年度初めに質問票を配布した“「表現の自由」とヘイト・スピーチ法規制に関する意識調査”の主な結果は以下のとおりである。「初めてヘイト・スピーチを聞いた時の気持ち」として「反感を感じた」71.9%、「驚いた」61.1%、「恐怖を感じた」49.7%と否定的な受け止め方が多数を占めた。「繰り返し聞くうち、違和感が増加した」52.8%、「違和感が減少した」10.4%。 「ヘイト・スピーチは法で規制すべき」47.6%、「表現の自由として法規制すべきでない」23.4%。「自分が暮らす地域に外国人が増えることに賛成」66%、「反対」29.3%。 「外国人が増えることの影響」は「日本の文化がより豊かになる」70.7%、「日本社会が活性化する」70.4%、「日本経済が活性化する」59.2%、「日本人の働き口が奪われる」34%。2015年度に計画していた“ヘイト・スピーチのターゲットにされた人々への聞き取り調査”も、上記の意識調査結果の分析作業と同時並行で行っている。日本国籍を保有する有権者を対象とした上記意識調査では、ヘイト・スピーチへの「反感」「驚き」が上位に現れたが、ターゲットにされた人々からは、ヘイト・スピーチに対してのみならず、ヘイト・スピーチを生み出す社会全体に対する「恐怖」「不安感」「不信感」が表現されている。 2015年9月13日、日本カナダ学会主催の公開シンポジウム「多文化主義と表現の自由」で、移民受け入れと関連した議論に鄭暎惠がパネリストとして参加した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年度後半に衆議院が解散となり12月に衆議院選挙が実施された影響で、同時期に選挙人名簿でランダムサンプリングする計画だった“「表現の自由」とヘイト・スピーチ法規制に関する意識調査”の実施が2015年度にずれこんだが、質問票配布・回収、データ入力(中央調査者に依頼)を終え、結果の分析作業まで進捗している。 そのため、当初2015年度に計画していた“ヘイト・スピーチのターゲットにされた人々への聞き取り調査”の開始が遅くなり、上記の意識調査の結果分析と同時並行で行っているが、全体的には当初の計画より半年遅れである。
|
Strategy for Future Research Activity |
「表現の自由」とヘイト・スピーチ法規制について考える場合、ヘイト・スピーチの社会的意味を分析する必要がある。ヘイト・スピーチを行う人々に関する研究同様、ターゲットにされた人々や、傍観するサイレント・マジョリティへの、社会的・経済的・精神的な影響について、引き続き調査・分析を進める。 本研究の一方で、国会では、言論の自由を優先させてヘイト・スピーチを禁止しないが差別的言動を許さない宣言をし、啓発活動に努めることをうたった「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が国会で急浮上した。 これが、諸先進国でのヘイト・スピーチ法規制と比較して、どのような共通点・相違点をもつのかを分析する。そこから、日本における「表現の自由」とは何か、考察したい。
|
Causes of Carryover |
2014(H26)年度の研究計画d)にある東京・京都・仙台での量的調査を、選挙人名簿からランダム・サンプリングして行う予定だったが、質問票の作成と学内倫理委員会を通す作業に当初考えていたより時間がかかっている間に、突然2014年11月に衆議院の解散が浮上したため、2014年10月頃から実質的に選挙人名簿が使用不可となった。 ランダムサンプリング作業が遅れた。 それによって、2014年度中に終えるはずだった量的調査の作業(発送の一部、入力作業、データクリーニング、分析など)が、2015年度にずれこんだため、それにかかる人件費、分析作業を行う研究会の開催にかかわる旅費などが、次年度使用となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015(H27)年度の残額367,022円については、 ① 量的調査の作業が遅延しているがため、2016(H28)年度も引き続き行う予定である。分析にあたる研究会で、研究協力者を招いてコメントをいただき、議論する予定である。 ② 量的作業が遅れているため、その後に計画されている質的作業も連動して遅れているが、それに要する費用として、次年度に使用する予定である。
|
Research Products
(14 results)