2016 Fiscal Year Research-status Report
「表現の自由」とヘイト・スピーチ法規制をめぐる社会学的研究
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26380696
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
鄭 暎惠 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (10207326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郭 基煥 東北学院大学, 経済学部, 教授 (10551781)
李 善姫 東北大学, 東北アジア研究センター, 専門研究員 (30546627)
師岡 康子 大阪経済法科大学, アジア太平洋研究センター, 研究員 (80648717)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘイト・スピーチ / 表現の自由 / 外国人 / 多文化主義 / 法制化 / サイレントマジョリティ / 健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘイトスピーチがサイレントマジョリティに及ぼす社会的影響に関する量的調査「表現の自由とヘイト・スピーチ法規制に関する意識調査」の結果、格差が拡大するグローバル社会での生存競争が激化する中、既得権が脅かされると感じて排他的になる割合が、若年層ほど大きいことがわかった。これは従来のナショナリズム・排外主義が、保守的な高齢層ほど強いのとは異なる現象である。 2012年以降のヘイトスピーチは、USAやEUで台頭する排外主義と通底するものがあると言える。日本社会の状況・文脈固有の要因と同時に、グローバル社会に共通する要因を見る必要がある。 ヘイトスピーチは「殺せと言っているだけで、誰も殺してはいない」と言われるが、ターゲットとされた被害当事者にとっては、人間としての尊厳を奪われる「アイデンティティの殺人」に相当する。「魂の殺人」と言われる虐待・性暴力などと同様、被害が他者からは「わかりにくい」が、心身ともに「原因不明」の多様な症状を伴い、健康面へのダメージは大きいと推測される。 ヘイトスピーチの被害当事者への質的調査(インタビュー)を行うのと並行して、精神科医・保健師を交えて、ターゲットとされた人々に与える健康面での影響について、学習会を開催した。ターゲットにされた人々は、ヘイトスピーチによりその表現を否定されて「表現の自由」が奪われつつあり、過度の緊張・不安・恐怖が与えられることで、人間関係・社会生活において看過できない悪影響がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年度に計画していた量的調査について、予定外の衆議院解散・選挙と2015年春の地方総選挙の狭間で、選挙人名簿によるランダムサンプリングが計画通りに行えなかったこと、さらに、研究代表の体調不良により、計画より半年余り進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
「ヘイトスピーチでターゲットとされた人々に与える影響」について、当事者に質的調査(インタビュー)を行う。 並行して、精神科医・保健師などの専門家の協力を得ながら、2017年度に2回ほど「ヘイトスピーチがもたらす健康被害」について研究会を行う。 これまでの量的調査、質的調査をふまえ、これら研究成果をまとめて報告書の作成を行う。
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Causes of Carryover |
2014年度に予定していた量的調査の進行が計画より半年余り遅れた上に、研究代表の体調不良により、その結果分析、質的調査、ヘイトスピーチ被害者への健康面での影響について医療従事者を交えて行う研究会も、同様に半年強遅れて進行しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
① 2017年度に、ヘイトスピーチ被害者への健康面での影響について、医療従事者にも参加を依頼し、2回ほど研究会を行う。 ② これまでの量的・質的調査の結果と合わせて報告書を作成する。
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Research Products
(9 results)