2014 Fiscal Year Research-status Report
日本西洋料理の発展経路とレストランワーカーの労働史
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26380700
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
澤口 恵一 大正大学, 人間学部, 教授 (50338597)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移民 / ゲストワーカー / レストラン / サービス業 / ライフコース / 職業 / 労働 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は国内のフランス料理の歴史を文献にもとづいてあきらかにしていった。資料の評価については辻調グループ校の職員の方々のアドバイスに従い、信頼性の高い資料を中心に読み込みを実施していった。その他、とりわけシェフや評論家による自伝や伝記的資料は、社会科学的な資料として利用できるものが多数あることがあきらかとなった。2月にはリヨン近郊にある辻調フランス校への視察を実施した。訪問先のシャトーレクレール校は1980年に開校をした。 同校ではテクニックを教育することとともに、文化への統合を目的とした教育を行ってきた。料理を学ぶためにはフランスの文化を理解することが不可欠であるという認識のもとカリキュラムが編成されている。 現地の職員への聞き取りから、日本人の技術については開講当初から定評があり、近年北欧やオセアニアの研修生もフランスの料理店で増えているものの、労働者としての日本人コックの評価は現在も高いことが確認された。 2月にフランスにおいて現地で開業をしている日本人シェフ(リヨン4人、パリ4人)への聞き取りを実施した。主な内容は(1)独立の可能性、(2)料理の近年の傾向、(3)訓練・労働の形態、(4)移民の不法就労の取締・労働許可証の取得等である。イタリアと比較して、フランス国内での開業は比較的容易であり、日本よりも有望な市場であること、日本人であることは肯定的に評価をされていること、生活環境は良好であり、次の展望が開けやすい土地柄であることが認知されていた。一方、労働者に有利な雇用制度にもっとも大きな障壁であると考える傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画では、主として3つの事項に関して研究を推進していく予定であった。そのひとつが文献の収集であり物故者を中心に文献によってフランス料理の歴史を明らかにすることができた。課題としては専門誌の記事の収集が十分にできていないことである。またスペインに関する文献は乏しく、予想していたほどの成果があげられなかった。専門家からの研究指導については、大阪への出張により、辻調グループの関係者から聞き取りを実施できたほか、かつての調査対象者などから、有力な対象者候補などを複数紹介していただくことができた。ただしこの点においてもフランスに比べてスペイン関係者への接近ができておらず今後の課題となっている。海外での聞き取りと視察については、当初の予定どおりに、辻調フランス校の視察を完了し、8人の対象者から聞き取りを実施することができた。2月の調査であったため、とりまとめは今後の課題となっているが、十分な成果をあげることができた。一方、都内関西で予定していた関係者へのインタビューは翌年度に持ち越されることとなった。以上の課題は残るものの概ねH26年度の当初に立てていた計画どおりに研究は進捗していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずH26年度に実施できなかった国内の対象者へのインタビューを実施しなければならない。すでに対象者候補となっている人物に対する聞き取りを、今年度の前半に実施していく予定である。また今年度からスペイン料理の関係者に対する聞き取りを実施していく予定である。そのために必要な文献の収集を行わなければならない。とりわけ司厨士協会の資料については未収集の状態であり、もっとも早くに着手すべき課題といえる。H27年度にはフランスでの調査を2回にわたって実施する予定である。H27年度に訪問したリヨン・パリ以外の地域を中心に長期滞在をしている開業者に対する聞き取りを実施したい。国内の調査では、H26年度の調査の結果として浮かび上がったフランスの有力シェフのもとで従業をした経験のある日本人に焦点をあててインタビューを実施する予定である。 また中間的な成果の報告として、イタリアとフランス2都市の開業者間の比較をテーマとした学会報告と論文の執筆を検討している。概ね計画通りにリサーチが進捗をしている。H28年度においてはスペインを中心にリサーチをする予定であり、そのための準備をH27年度中に進めることが重要となる。
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Causes of Carryover |
当初インタビューの実施直後に実施する予定であった委託によるトランスクリプト作成が当初の計画よりも遅れ、翌年度に持ち越されることになった。委託が予定よりも遅れた要因は2月の出張からの帰国した後、研究以外の業務が多忙となったことと、委託費のための運転資金が不足していたことによる。これによりその他(委託費)が予算よりも少ないものにとどまった。また国内とりわけ関西で予定していたインタビューをH26年度中に実施することができなかったために、出張費の支出が少なくなった。以上のことから、これらに係る費用をH27年度予算に繰り込むこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26度に使用する予定であった国内でのインタビューとインタビューの文字起こしに係る委託費が加わることになり、前年度からの繰越金から支出される予定である。国内でのインタビューについては、H27年度の前半に関西・東京近郊への出張を予定している。またH26年度の前半に委託による文字起こしのための支出を行う予定である。
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