2014 Fiscal Year Research-status Report
福島第一原発事故における日本政府記者会見と各国の新聞報道の比較分析
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26380714
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
瀬川 至朗 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00515413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 理 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70424794)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 原発事故 / ジャーナリズム / 新聞 / 内容分析 / 発表報道 / 国際比較 / 記者会見 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原発事故についての日本政府記者会見と各国の新聞報道の比較分析に向けて(1)日本政府記者会見の分析、(2)新聞報道の内容分析、(3)報道関係者へのインタビュー調査――という3分野の研究に取り組んでいる。2014年度はそれぞれ以下の研究を実施した。 (1)日本政府記者会見は、官房長官会見、原子力安全保安院会見、東京電力会見の3つである。このうち官房長官会見については2011年3月11日の事故発生から1週間分、原子力安全保安院会見については事故発生から2週間分のテキストデータ(質疑応答部分を含む)の作成を終了した。 (2)「(炉心)溶融」という言葉が朝日、日経、毎日、読売の見出し・記事本文にどう登場したのかを事故発生後1か月間について調べ、その推移と政府記者会見(とくに原子力安全保安院会見)での発言とを比較分析した。記者会見のテキストデータ化は未完のため、今回は政府事故調査委員会最終報告書の会見についての記述などを資料とした。 その結果、「溶融」についての政府記者会見の発言と、新聞の見出しに登場する頻度の推移が同じ傾向にあることが推察でき、「溶融」については発表報道になっていた可能性が示唆された。また、見出しに「溶融」が登場しないのに本文で「溶融」に言及している記事が多く、「編集局の意思」(見出し)と「取材部門の意思」(記事本文)の違いが示唆された。事故初期における溶融の語られ方は毎日新聞を除き総じて抑制的で、新聞ごとに抑制的傾向が異なっていた。 (3)報道関係者インタビューの予備調査として、福島原発事故の報道にかかわった上海の有力紙「東方早報」の編集幹部と「上海テレビ」の取材記者にインタビュー調査を実施した。両メディアともに、日本のNHKニュースを自社の報道の重要な情報源として利用していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)<日本政府記者会見の分析> 官房長官会見、原子力安全保安院会見、東京電力会見ともに記者会見記録のテキストデータは公表されておらず、研究対象となる記者会見テキストデータの作成そのものも本研究のオリジナリティとなる。会見記録の入手が難しく時間がかかったため、テープ起こしの作業開始が遅くなった。現在、作業は順調に進んでおり、2015年度中には、3つの記者会見を事故発生から約3週間分(2011年3月11日~31日)のテキストデータ化を完成させる予定である。 (2)<新聞報道の内容分析>研究計画では日本の新聞報道についての内容分析を2014年度中におこなう予定だったが、まだ未実施である。現在、定量的な分析方法を開発中で、それをもとに分析作業は進行すると考えている。2014年度は代わりに炉心溶融についての報道分析をより深めて新知見を見出し、論文化した。 (3)<報道関係者へのインタビュー調査>予備調査といて中国・上海の報道関係者に詳細なインタビュー調査を実施することができ、ほぼ順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)の<日本政府記者会見の分析>は本研究のオリジナルな部分である。官房長官、原子力安全保安院、東京電力の3つの記者会見についてのテキストデータは公表されたものが存在しない現状では、そのテキストデータ化自体、社会的意義が大きいと考えられる。 東電記者会見については当初、朝日新聞記者の手になるものがある程度公開され、出版もされていることから、それを活用し、官房長官、保安院の記者会見を事故発生から1か月間、テキストデータ化しようと計画していた。しかし、3つの会見のデータのレベルをそろえて分析する必要性があることから、東電会見についても、会見の映像・音声データを入手し、それを自分たちでテキストデータ化する方針に変更した。テープ起こしによるテキストデータ化は時間と費用のかかる作業であり、本研究の期間とタスクの多さ、予算規模を考慮すると、事故発生1か月間の3会見のテキストデータ化は困難で、作成対象を2014年3月末までの3週間に短縮することにした(予算の関係で、今後のさらなる変更もありうる)。 (2)<新聞報道の分析>(3)<新聞関係者へのインタビュー調査>については特に変更の予定はない。
研究体制としては、連携研究者として、山田耕氏(早稲田大学政治経済学術院准教授)に加わっていただくことにした。山田氏は科学報道の内容分析の研究を進めており、計量テキスト分析の手法開発と分析実施に協力してもらえる。
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Causes of Carryover |
主に、日本政府記者会見(官房長官、原子力安全保安院、東京電力)のテープ起こしによるテキストデータ化の作業が予定より遅くなったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
記者会見のテキストデータ化の作業は現在、順調に進んでおり、次年度使用額は、主にこの作業のための費用に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)