2014 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者支援におけるサークル・オブ・フレンズの国際比較研究
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26380818
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Research Institution | Mimasaka University |
Principal Investigator |
渡辺 勧持 美作大学, 付置研究所, 研究員 (00090423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薬師寺 明子 美作大学, 生活科学部, 准教授 (10412230)
島田 博祐 明星大学, 教育学部, 教授 (40280812)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サークル・オブ・フレンズ / ダイレクト・ペイメント / 知的障害 / 本人主体 / ピープル・ファースト / Isle of Wight / John’s Club / MENCAP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、知的障害者に対するダイレクト・ペイメント(DP)を支援する制度としてのサークル・オブ・フレンズの実態について、外国との比較研究を実施し、日本の政策・制度の提言を行うことである。本年度は、英国保健省の情報から、知的障害者のDP受給者率がもっとも高いワイト島(98%)に2014/8/19から9/4まで訪問調査を実施した。調査1.John’s Clubでの、指導者J氏(知的障害者の最大組織Mencapの本部理事、知的障害者支援により2014年女王陛下の勲章(BEM)を受けた。本人も知的障害がある)に面接、MENCAPが運営しているHaylands FarmでPeople First の会合に出席、また同Clubでのパーティに参加し、本人や親からの聴き取りを行った。調査2.Isle of Wight のMENCAP理事で、息子と妻、両人がDPを受けているD氏に、自宅で面接した。D氏は、ISLE OF WIGHT LEARNING DISABILITY PARTNERSHIP BOARDの機関誌2008年冬号を編集した。調査3.SWの A.O.氏とIsle of 州庁舎で面接した。得られた知見:1.ワイト島は、DPの受給率が英国で最も高いが、一方で、DPの受給資格がない軽度、中度の知的障害者への支援が軽視される傾向にある。2.本人主体の理念に対応したサークル・オブ・フレンズのような支援グループは理想的であるが、障害が重度になると専門的な観察に基づく評価が必要となり、その場合には自治体の対応システムが問われる。3.DPの導入等によって、知的障害者が地域社会に参加できるようになっているが、その場合、ピープル・ファーストのような当事者の会のあるか、どうかが大きな意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究目的は、1.英国の研究協力者エマーソン、ハットン両教授との研究協議 2.研究代表者渡辺勧持による英国の地方自治体における実態調査の2点である。目的1については、エマーソン教授にこれまでの調査経過と今回の研究計画についてメールで説明し、本研究内容に塾sちしている英国の研究者についての意見を求めた。エマーソン教授は、研究の重要性に賛同し、自分自身は大学の職を引退し、今後国際学会の理事に力を注ぐとのことで、クリス・ハットン教授を推薦した。ハットン教授とはワイト島の調査結果を整理し、今後連絡する。 2.英国の地方自治体における実態調査については、上記、ダイレクト・ペイメントの受給者率がもっとも高いワイト島で、調査を実施することができた。知的障害者本人でありながらサークル・オブ・フレンズとピープル・ファーストの双方の機能を充実して活動を続けているJ氏と密着して聴き取りを行えたことによって活動の内容が実感できたが、本人が読み書きができないため、調査は、活動の観察によるものが多く、本人からの意見を十分に聞くことができなかった。今後、J氏 と親しく、息子もその妻も知的障害者で、DPを受けている、D氏および、州政府で重度の知的障害者に経験が深い、ソーシャルワーカーの A.O.氏から、さらなる情報を得たいと思っている。交付申請書の目的には、ダイレクト・ペイメントの受給者率が低い自治体(南西部のCornwall(6%)、ロンドン近郊のWindsor and Maidenhead (8%)等)への調査もできれば行いたいとしたが、今回は、予算の関係で訪問調査を実施することができなかった。次回に行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今回実施した英国ワイト島の調査を資料として、その内容や制度をさらに確認するため、英国、Circles Network の事務局長Neville 氏をWarwickshire に訪問し、Networkの英国各地のサークル・オブ・フレンズを訪問し、サークルの障害者本人および参加者に対して、サークル結成、および参加の動機、継続している理由や動機づけ、知人等地域社会の人々とのつながり、広まりについて、コーディネーターに対してその役割、研修、現在の問題についての聞き取りを行う。また、バーミンガムでダイレクト・ペイメントを推進している政府の関連団体であるIn-Control でも、同様の聞き取りを行う。また、平成23~平成25 年度 「知的障害者のダイレクト・ペイメントに関する国際比較研究」でカナダ、知的障害者の親、本人の会であるCommunity Living British Columbia(CLBC)と協力を得て、ダイレクト・ペイメントについて調査を実施した分担研究者島田が、今回はサークル・オブ・フレンズに焦点をあてて調査を行う。スウェーデンでは、ダイレクト・ペイメント制度のサークル・オブ・フレンズと同じ制度はない。しかしながら、入所施設を全廃し、知的障害者は社会参加を果たしている。薬師寺は昨年訪れたイヨテボリ市の人脈を用いて、コンタクトパーソンのようなサークル・オブ・フレンズの理念に近い活動についての実態調査を実施する。2年間に明らかにされた3カ国の調査結果について、研究協力者エマーソン、ハットン両教授および調査を実施した州政府の主席ソーシャルワーカーと研究協議を行い、結果の確認と国際的な視野からの今後の動向について討議する。
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Causes of Carryover |
次年度は、研究代表者渡辺が英国の調査、分担研究者薬師寺がスウェーデン、島田がカナダでの調査を計画している。円安のため国外調査の経費がかかっており、そのための予算を確保した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前期、理由に述べたように、外国旅費に用いる。
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Research Products
(3 results)